2025年5〜6月のトルコ旅行記です(料金は2026年5月調べのものを記載してます)。
世界遺産「イスタンブール歴史地区」を構成する「スレイマニエ・モスク(Suleymaniye Mosque)」を訪問しました。天才建築家ミマール・シナン(スィナン)によるオスマン帝国のモスク建築の傑作です。
この記事では、「スレイマニエ・モスク」の見どころや特徴、歴史などを解説していきます。
世界遺産「イスタンブール歴史地区」の全体の解説は以下より。

スレイマニエ・モスクとは?
世界遺産スレイマニエ・モスクは、オスマン帝国全盛期のスレイマン1世(10代スルタン)により、1550年~1557年にかけて建造されました。モスクはトルコ語でジャーミィ(Camii)なので、スレイマニエ・ジャーミィ(Süleymaniye Camii)とも呼ばれます。モスク完成の9年後にスレイマン1世は亡くなり、モスクの敷地内に正妻ヒュッレムとともに埋葬されています。

設計を担当したのは天才建築家ミマール・シナン(スィナン)です。1539年(50歳くらいの時)から帝室造営局長に就任しました。シェフザーデ・モスクに続いて建造されたスレイマニエ・モスクは、彼の作品の中でも特に有名で、傑作と言われています。

ミマール・シナンはセリム1世、スレイマン1世、セリム2世、ムラト3世に仕え、生涯で300以上の建造物を設計しました。彼の作品の中で代表的な3つのモスクは、修行期のシェフザーデ・モスク(イスタンブール)、熟練期のスレイマニエ・モスク(イスタンブール)、晩年の巨匠期のセリミエ・モスク(エディルネ)とされています。シナンの生涯の最高傑作はエディルネのセリミエ・モスク(自他ともに認める)ですが、知名度が高いのはスレイマニエ・モスクです。
シナンはビザンツ建築の最高傑作であるアヤソフィアの大ドーム(直径32m)構造を研究しており、自身の設計する建造物に取り入れてきました。スレイマニエ・モスクは、アヤソフィアに一歩及ばずですが、これまでのオスマン建築の中では最も大きいドーム(直径27.5m)となりました(後年のセリミエ・モスクはアヤソフィアと並ぶ)。
17世紀に火災の被害があり、19代スルタンのメフメト4世によりすぐ修復されましたが、バロック式を取り入れたものに改築されました。その後19世紀の修復で創建時の姿に戻されました。
スレイマニエ・モスクは火災などの被害はありましたが、建設以来100回以上発生している地震でも、モスクの壁にヒビ1つ入ってないという恐ろしい耐久力を持っています(劣化によるドームの亀裂などはありますが)。アヤソフィアは補強工事が頻繁に必要だったことを考えると、シナンの設計力は天才的だと思います。
1985年に「イスタンブール歴史地区」を構成する世界遺産に登録されました。
場所・料金・営業時間
スレイマニエ・モスクの場所は以下となります。丘の高い場所に建っており、アクセスが少し悪いです。トラムT1の「Beyazıt」駅から徒歩15分程度です。自分はこの方法で行きましたが、結構坂道がきつかったです。
またはバスで向かう場合、「Eminönü Kantarcılar」停留所から徒歩12分程度です。こちらの方が登りがないので良いかもしれません。後はタクシーも良いかもですね(ぼったくり注意)。
モスクなので入場料金は無料となります(2026年4月調べ)。詳細は公式サイトにて(VRツアーができるサイト)。女性はスカーフで頭を覆う必要があります(スカーフは入口で貸し出しあり)。礼拝時間は入場できません。日中であればお昼前後、17時前後を避ければ礼拝時間と被らないと思います。金曜に関しては集団礼拝があるので、昼過ぎから入場可能になると思います(正確な時間は不明)。
- チケット料金:無料
- 営業時間:月~金→8:30~23:00 / 土日→8:30~22:00 ※礼拝の時間は入場禁止
全体図
スレイマニエ・モスクの全体図です。主ドーム(④)とそれを支える副ドーム×2(⑤)というように、アヤソフィアと同じドーム構造になっています。ドームの大きさはアヤソフィアより一回り小さいです。赤矢印は正面入口です(他にも入口あり)。

①中庭
②泉亭
③回廊
④主ドーム:直径26m/天井の高さ53m
⑤副ドーム(半ドーム)×2
⑥隅のドーム(小ドーム)×4
⑦ミフラーブ:メッカの方向を示す窪み
⑧ミンバル:説教壇
⑨内側と外側の柱廊
⑩ミナレット×4
主な見どころ
スレイマニエ・モスクの主な見どころや特徴を解説していきます。観光の所要時間はモスクのみなら30分程度、廟など周辺の施設も観光するなら全部で1時間程度かなと思います。
外観・中庭
イスタンブール旧市街は全部で7つの丘がある街ですが、スレイマニエ・モスクはそのうちの1つの丘の頂上に建っています。街のあらゆる場所から眺めることができます。
ミナレット(⑩)は全部で4本あります。高いミナレットにはバルコニーが3つあり、ムカルナスで支えられています。バルコニーは全ミナレット合わせると合計10個あります。上部にはターコイズブルーのタイルが埋め込まれています。ミナレットが4本なのはスレイマン1世がイスタンブール征服後の4番目のスルタンであること、ミナレットのバルコニーが全部で10個なのはスレイマン1世が10代目スルタンであることを示しています。

シェフザーデ・モスクの記事でも解説しましたが、シナンの天才ぶりが発揮されているのがバットレス(控え壁)の扱いです。大ドーム建築では大きな柱でドームの重量を支えますが、さらにその柱が倒れないように外壁にバットレスが必要となります(特にトルコは地震が多いのでかなりシビアな問題)。アヤソフィア(以下の写真)では、大ドーム空間を維持するための巨大なバットレスが原因で、外観がかなりゴツゴツとした印象になってしまうのが欠点でした。

シナンはアヤソフィアのドーム構造を自身の設計に取り入れましたが、視覚的に支配力の強いバットレスは何とかしたいと考えました。スレイマニエ・モスクは大ドーム建築のため、アヤソフイアと同じくかなり大きいバットレスが必要でしたが、それを視覚的に消し去るような工夫を施しました。シェフザーデ・モスクからさらに進化させた方法ですが、礼拝室の南北の内側と外側に柱廊(⑨)を設け、バットレスをそこに組み込むことで、視覚的な支配力を極力排除しました。
平面図で見ると仕組みが分かりやすいです。巨大なバットレスは外側だけでなく、内側の壁面にも視覚的な影響を及ぼすため、内側にも柱廊を設けることで存在を隠蔽しました。これにより側廊の空間がしっかり確保されています。

モスクの入口です。大理石の大きな門です。

いつものごとく入口にはムカルナス装飾があります。

中庭(①)です。真ん中には大理石の泉亭(②)があります。

回廊(③)です。大理石や花崗岩など様々な素材の柱で組み立てられています。ビザンツ時代の建築材が再利用されている所もあるとのことです。
内観
礼拝室の入口です。朝9:00頃ですが、それなりに観光客はいました。

中へ入ります。装飾は全体的に少なめでとても上品な雰囲気です。シェフザーデ・モスクと同じように空間の調和・一体感があります。豪華な装飾のスルタンアフメト・モスク(ブルーモスク)と比べるとかなりシンプルな印象です。

窓が多くかなり光が入ってくるのも特徴です。主ドーム(④)の前後には副ドーム(⑤)が2つあり、これはアヤソフィアと同じ構造です。

スレイマニエ・モスクはアヤソフィアのペンデンティブ構造を利用して大ドームが載せられています。ドームは直径27.5mで、アヤソフィアよりはひと回り小さく、スルタンアフメト・モスク(ブルーモスク)と同じくらいの大きさです。ドームの高さは54mでアヤソフィアより2mほど低いですが、スルタンアフメト・モスクよりは10m以上高いです。
主ドームの左右は副ドームはなく、タンパン(アーチで区画された半円形部分)になっており、ここに窓がたくさん造られています。
こちらは左右にある側廊です。先ほども解説したように、側廊のすぐ隣に巨大なバットレスを隠蔽するための狭い柱廊(内側の柱廊)が設けられています。そのためバットレスは側廊まで視覚的な影響が及んでおらず、しっかり側廊の空間が確保されているのが分かります。また、写真はないですが、側廊の天井のドームは交互に大きさが違っており、視覚的なリズムが作られています。
隅のドーム(⑥)です。こちらはペンデンティブでなく、ムカルナスを利用したスキンチでドームが構築されています。

ミフラーブ(⑦)とミンバル(⑧)があるキブラ壁側です。ミフラーブ周辺は唯一タイルが使用されているエリアです。ランプも美しいです。

ステンドグラスはかなりデザインが凝っています。シンプルな内観だけに際立ってますね。
また、スレイマニエ・モスクにはオイルランプから出る煤(すす)を掃除する仕組みもあります。煤を正面玄関の上の部屋に集められるように礼拝室内の空気の流れが設計されており、集められた煤はインクの製造に使用されました。めちゃ賢い設計ですよね。
周辺の施設(キュリエ内)
オスマン帝国のモスクは、その敷地内に霊廟、マドラサ(学校)、ハマム(浴場)、ダールッシァ(精神病院)、イマーレット(慈善給食所)、キャラバンサライ(隊商宿)、タブハーネ(宿舎)、バザールなどが複合的に配置されており、公共施設群「キュリエ」(Külliye)となっていることが多いです。スレイマニエ・モスクも、モスクを中心にキュリエで構成されており、今でも建物が残っています(ハマムも現在も営業しています)。キュリエ内の多くの建物もミマール・シナンにより設計されました。マドラサがとても多いです。

訪問時は廟群を観光したので、紹介します。スレイマン1世廟とヒュッレム廟は、モスク訪問時には是非見学すべき場所です。上図の矢印の所から敷地に入れます。ちなみ廟もモスクと同じく入場料金はかかりません。
スレイマン1世廟
廟群のエリアへ入り最初に目にするのはスレイマン1世廟です。ミマール・シナンにより建造されました。

八角形の廟で、周囲には柱廊が備わっています。


マニアックですが、廟入口張り出し屋根の上にある小さな窓の所に、聖地メッカのカーバ神殿の黒石が埋め込まれています。ソコルル・メフメト・パシャ・モスクで見たものと同じですね。

入口の両端には美しいイズニク製のタイル装飾パネルがあります。16世紀の全盛期イズニクタイルならではの光沢のある「トマト赤」が見どころです。

入口の扉です。扉にはキュンデカリという技法で美しい模様が描かれています。キュンデカリは、釘や接着剤を一切使用せず、木片を幾何学的な形に接続するトルコの伝統的な技法です。耐久力が抜群で、モスクの扉やミンバルなどでたくさん見かけます。

内部へ。スレイマン1世以外にも、娘のミフリマー・スルタン、スレイマン2世(20代スルタン)、アフメト2世(21代スルタン)らも埋葬されています。モスクの礼拝室とは違い、かなり豪華な装飾で彩られています。八角形平面からペンデンティブを使って円形ドームが構築されています。外から見てもあまり分かりませんがドームは2重になっているとのことです。ドームの装飾は結構渋めですね。ペンデンティブにタイル装飾が施されているのは珍しい気がします。
アーチ内のステンドグラスも美しいです。少しずつデザインが違います。
周囲は色大理石が交互に配置されているように見えますが、これは色大理石のように描かれている騙し絵ですね。

ヒュッレム廟
続いてヒュッレム・スルタン廟です。スレイマン1世の正妻として有名です。ヒュッレム(ロクセラーナ)は奴隷の身分からスルタンの正妻にまで上り詰め、オスマン帝国の政治に影響力を持った女性です。

ヒュッレム・スルタン廟はスレイマン1世廟よりも一回り小さい八角形の建物です。シナンの作品かと思われます。

スレイマン1世廟と同じく、入口部分には美しいイズニクタイルがあります。

損傷している部分もありますが、それがまた歴史を感じさせますね。


タイルが剥がれ、下書き?が見える箇所もあります。

内部へ。ヒュッレム以外にも、その親族(孫かな)も埋葬されています。外観は八角形の建物ですが、内部はさらに十六角形平面になっており、その上にドームが載っています。ドームは漆喰ですが元々豪華な装飾が施されていたようです。

周囲はミフラーブのような窪みが8つあり、青と白を基調とした美しいイズニクタイルで装飾されています。
ミマール・シナン廟
少し離れた所にひっそり建っているのはミマール・シナン廟です。シナン自身で建造された廟です。工事中でしっかりは見学できませんでしたが、かなり質素な廟です。
イスタンブールは猫ちゃんが本当に多く、モスクの敷地内にもたくさんいました。日陰も多いので過ごしやすそうですね。

まとめ
世界遺産スレイマニエ・モスクの観光の見どころや特徴のまとめです。
- ミマール・シナンによるオスマン建築の傑作
- アヤソフィアには及ばないが、かなり大きいドーム建造物
- 装飾は抑えられており、全体的にシンプルな内観
- 高い丘の上にあるのでアクセスが少し大変
- 観光の所要時間はモスクのみなら30分程度、廟など周辺の施設も観光するなら全部で1時間程度
- モスクのすぐ隣にあるスレイマン1世廟とヒュッレム1世廟はタイル装飾が美しくおすすめ

























