2024年4~5月のポルトガル旅行記です(料金は2025年12月調べのものを記載してます)。
ポルトガル中部の街トマールにある世界遺産「トマールのキリスト教修道院」を訪問しました。
この記事ではトマールのキリスト教修道院はどういった世界遺産なのか、歴史、入場料金や観光の見どころも踏まえて紹介していきます。
世界遺産「トマールのキリスト教修道院」とは?
世界遺産「トマールのキリスト教修道院」は、ポルトガル中部の街トマールの小高い丘にある中世の修道院です。

トマールの場所は以下となります。首都リスボンから約140キロほどに位置しています。
リスボンからトマールへの行き方は以下にて解説しています。

トマールのキリスト教修道院は12世紀頃にテンプル騎士団により建設されました。その後キリスト騎士団により管轄され、何世紀にも渡り回廊などが増築されました。
1983年に以下の理由により世界遺産に登録されました。
- トマールのキリスト教修道院は、テンプル騎士団聖堂をはじめ、様々な時代に増築された回廊など、人間の創造的才能の傑作を形成している(登録基準1)。
- トマールのキリスト教修道院は、もともとレコンキスタの象徴的な記念碑だったが、大航海時代のマヌエル1世時代には、ポルトガルの他文明への開放を象徴するようになった(登録基準6)。
| 登録名 | トマールのキリスト教修道院 (Convent of Christ in Tomar) |
| 国 | ポルトガル |
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 登録基準 | (1)、(6) |
| 登録年 | 1983年 |
テンプル騎士団聖堂やマヌエル様式の巨大な窓をはじめ、複数の回廊など見どころがたくさんあります。ゴシック様式、マヌエル様式、ルネサンス様式など様々な建築様式が融合しています。
トマールのキリスト教修道院の歴史
トマールのキリスト教修道院の簡単な歴史です。
十字軍の遠征など中世ヨーロッパで活躍したテンプル騎士団により、1160年に建設されました。ポルトガルにおけるテンプル騎士団の本拠地となりました。当時建設された円堂である「テンプル騎士団聖堂」はイェルサレムにあるオマール・モスクがモデルとなっています。
1312年にテンプル騎士団の活動が禁止となり、ポルトガルに存在したテンプル騎士団はキリスト騎士団へと改編され、修道院は彼らが管轄することになりました。
その後、15世紀のポルトガル大航海時代に活躍したエンリケ航海王子や、16世紀のポルトガル国王マヌエル1世やジョアン3世らによって、様々な建築様式の回廊が増築されました。
1983年に「トマールのキリスト教修道院」として世界遺産に登録されました。
場所・料金・営業時間
トマールのキリスト教修道院はトマールの街の小高い丘に建っています。徒歩でアクセスが十分可能です(調べてませんがバスもあるみたいです)。ちなみに徒歩で10分ほどです。
入場チケットの料金と営業時間は以下となります(2025年12月調べ)。2024年4月の訪問時点では10ユーロでしたが、現在は15ユーロになっているようです。詳細は公式サイトにて(日本からだとアクセスできないかも)。
- 料金:15ユーロ(リスボアカードがあれば無料で入れます)
- 営業時間:9:00~17:30
ちなみに修道院がある丘の麓には観光案内所があり、トマールを観光する人はそこで荷物を預けることもできます(無料)。受付の人はとってもウェルカムな感じで好感を持てました。

トマールのキリスト教修道院の全体図
トマールのキリスト教修道院の全体図です。入口はガイドブックなどで確認した場所とは別でした(赤矢印)。主な見どころの施設に番号を付けています。観光の所要時間は2~3時間あれば大体回れるかなと思います。

①南門 16世紀
②墓の回廊(Cemetery Cloister) 15世紀
③沐浴の回廊(Washing Cloister) 15世紀
④テンプル騎士団聖堂 12世紀
⑤キリスト騎士団聖堂 16世紀
⑥主回廊(Main Cloister) 16世紀
⑦サンタ・バルバラの回廊(Cloister of Saint Barbara)/マヌエル様式の大窓 16世紀
⑧宿屋の回廊(Hostelry Cloister) 16世紀
⑨ミシャの回廊(Cloister of Micha) 16世紀
⑩カラスの回廊(Cloister of the Crows) 16世紀
主な見どころ
トマールのキリスト教修道院の大きな見どころとしては、④テンプル騎士団聖堂と⑦マヌエル様式の大窓が挙げられますが、豪華絢爛な①南門や様々な建築様式を堪能できるいくつもの回廊も見逃せません。順番に解説していきます。
①南門
まずトマールのキリスト教修道院まで自分は麓から歩きました。徒歩で10分ほどです。

裏手から登る感じになったので、修道院の正面ではなく先に南門側へ出てしまいました。目の前に見える円形の建物は④テンプル騎士団聖堂です。南門は④テンプル騎士団聖堂にへ繋がる門(閉鎖しているのでここからは入れません)となっています。

南門の正面まで到着です。マヌエル様式の立派な門です。マヌエル装飾の特徴は、渾天儀(航海計器でありマヌエル1世の個人的な紋章)、鎖、錨、ロープ、波、サンゴ、海草など、主に海や船に関連した豪華なレリーフです。

リスボンのジェロニモス修道院の南門を彷彿とさせる豪華絢爛な装飾です。ちなみにこの南門は、ジェロニモス修道院を手掛けたスペイン人建築家ジョアン・デ・カスティーリョにより1515年に建造されました。


②墓の回廊(Cemetery Cloister)
南門を後にして正面入口へ向かいます。中には受付があるので、そこで入場料金を支払います。

内部に入り、最初に訪問したのは墓の回廊です。15世紀にエンリケ航海王子により建設されたゴシック様式の回廊です。騎士や修道士の墓所にもなっているとのことです。青と白のアズレージョ(16世紀のもの)が所々に施されています。


かなり小さい回廊です。中庭もこじんまりしています。

③沐浴の回廊(Washing Cloister)
続いては墓の回廊の隣にある沐浴の回廊です。こちらも15世紀にエンリケ航海王子により建設されたゴシック様式の回廊です。かつては中庭に貯水池があり、修道士らが沐浴や洗濯をしていたとのことです。2階建ての回廊で、写真は2階部分です。

1階部分は手を加えられずそのままの状態なのかなと思います。

沐浴の回廊の東側にはかつてエンリケ航海王子が住んでいた宮殿の跡があります。

④テンプル騎士団聖堂と⑤キリスト騎士団聖堂
修道院の観光のメインの見どころであるテンプル騎士団聖堂です。12世紀後半にテンプル騎士団により建設されました。修道院の中でも1番古い建物かなと思います。十六角形の円堂になっており、中央に八角形の礼拝堂があります。入口のフレスコ画がかなりインパクトあります。

騎士団がすぐに戦いに行けるように、馬に乗って八角形の礼拝堂を回りながらミサに参加したと言われています。礼拝堂は天井と繋がっています。天井は十六分割されており、まるで傘のようです。


礼拝堂内部もかなり豪華絢爛の装飾です。

聖堂の壁はフレスコ画で埋め尽くされており、これらは1499年にマヌエル1世により造られました。


柱の消えかかってる装飾に長い歴史を感じます。

続いてテンプル騎士団聖堂と繋がっているキリスト騎士団聖堂です。16世紀初頭にポルトガル国王のマヌエル1世の命令により建設されました。聖歌隊席が見られます。上には行けませんでした。外に出ると分かりますが、この聖堂の西側(写真でいうと奥)が有名なマヌエル様式の大窓となってます。

⑥主回廊(Main Cloister)
主回廊へ。ジョアン3世の回廊とも呼ばれます。1557年のジョアン3世時代に建設が開始され、完成したのは1591年のスペイン・ポルトガル連合王国時代です。スペイン王であったフェリペ2世は、ここでフェリペ1世としてポルトガル王に戴冠したとのことです。
ルネサンス様式の回廊で、ゴシック様式の回廊と違い、天井や柱、アーチ部分が幾何学的な印象があります。


回廊の所々にはマヌエル様式のレリーフが見られます。
⑦サンタ・バルバラの回廊(Cloister of Saint Barbara)/マヌエル様式の大窓
主回廊のすぐ隣にサンタ・バルバラの回廊があり、そこからマヌエル様式の大窓を見ることができます。トマールのキリスト教修道院でのメインの見どころです。16世紀マヌエル1世時代に建造されました。ちなみにマヌエル様式の大窓があるのはキリスト騎士団聖堂の西側の壁部分です。


近くまで行くことができます。写真だと伝わりにくいですが、かなり大きいです。マヌエル様式の傑作と言われています。上部にはキリスト騎士団の十字紋章、マヌエル1世の紋章である渾天儀、捻じれたロープ、サンゴなどマヌエル様式のオンパレードです。


一番下にはロープに巻き付いた人がおられます。

大窓以外の部分もしっかりマヌエル様式で装飾された建物です(キリスト騎士団聖堂)。

⑧宿屋の回廊(Hostelry Cloister)
宿屋の回廊です。1541~1542年に建造されました。巡礼者などが一時的に宿泊した場所とのことです。
こちらは2階部分の回廊です。天井が木造なのは珍しいです。

1階2階とも回廊には部屋が沢山あり、多くの巡礼者が宿泊していたんでしょうね。

⑨ミシャの回廊(Cloister of Micha)
ミシャの回廊です。16世紀ジョアン3世時代に建造されました。豪快な造りの回廊です。石畳の道で少し歩きにくいです。

1階のみの回廊です。

回廊の西側にはパンを焼くかまどがあります。当時ここで焼いたパンが貧しい人々に配られていたとのことです。


⑩カラスの回廊(Cloister of the Crows)
最後に訪れた回廊はカラスの回廊です。16世紀ジョアン3世時代に建造されました。ミシャの回廊と似ています。読書や祈りなど修道士らの憩いの場だったとのことです。


かなり大きな食堂が隣接しています。

まとめ
世界遺産トマールのキリスト教修道院の観光・見どころのまとめです。
- テンプル騎士団聖堂とマヌエル様式の大窓が最大の見どころ
- 観光の所要時間は2~3時間
- 麓から歩いて10分で行ける(バスも出てるみたい)
- 荷物は麓の観光案内所で無料で預けれる






