2023年に「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」がユネスコ世界文化遺産に登録されました。シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊は、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの3か国を跨ぐ世界遺産であり、シルクロードに関連する史跡合計34件が構成資産となりました。
この記事では世界遺産「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」とはどういったものか?シルクロードの歴史や各国ごとの構成資産について分かりやすく解説していきます。
世界遺産「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」とは?
シルクロードとは?
ザラフシャン=カラクム回廊の説明の前に、まずシルクロードとは何でしょうか?知らない人はいないくらい有名な名前です。分かりやすく解説していきます。
シルクロードは、紀元前の古代からあるユーラシア大陸の東西を結ぶ交易路の1つです。中国の長安(現在の西安)を起点に、中央アジアを経由して、西はローマまでを結んでいました。東方の絹が西方に運ばれた道なので、19世紀末のドイツの地理学者フェルディナント・フォン・リヒトホーフェンによりシルクロード(絹の道)と名付けられました。また、天山山脈の南側のオアシス都市を結んだ交易路なので「オアシスの道」とも呼ばれます。
シルクロードは分かりやすい1本道ではなく、時代によってルートも様々であるため、いくつかのルートが組み合わさったネットワーク状の交易路の総称となります。
シルクロードは全て1人で歩ききるようなものではなく、都市から都市へとキャラバン(隊商)がラクダなどを使って荷物や物資を運び、そこからまた別のキャラバンが次の都市へと運ぶといった「中継交易」が行われていました。そのため絹などの交易品だけでなく、様々な芸術や宗教、思想、食文化、技術などが少しずつ広がり、次第に東西文化が混ざっていきました。日本もシルクロードの影響を受けており、インド発祥の仏教もシルクロード経由で朝鮮半島へ持ち込まれ、最終的に百済から伝わりました。あとペルシャ製のガラス器などもシルクロードを経由で遣唐使によって日本に持ち込まれ、現在東大寺の正倉院に収蔵されています。世界史と日本史が繋がる部分ですよね。
東西交易路は下図のように、シルクロードである「オアシスの道」(オレンジ)以外に、「草原の道」(緑)と「海の道」(青)があります。これらの道を全て含めてシルクロードと言われることもあります。

草原の道(ステップロード):天山山脈の北にある交易路です。遊牧民族の生活の場でもあり、匈奴、突厥、ウイグル、モンゴル民族などが利用していました。
海の道(マリンロード):その名の通り海の交易路です。アラビア海、インド洋、南シナ海、東シナ海を結ぶ海路で、紀元前後にはギリシア人、8世紀以降はイスラム商人、11世紀以降は中国人が活動し、東方から陶磁器などが西方に運ばれました。
オアシスの道は1世紀頃にヨーロッパでローマ帝国、中国で後漢が安定時代を迎えたことで活発化しましたが、盛んに行われた交易も7〜8世紀頃までがピークで、それ以降は海の道が東西交易路のメインとなりました。
ザラフシャン=カラクム回廊とは?
ザラフシャン=カラクム回廊はシルクロード「オアシスの道」の一部のことです。パミール高原を源流としたザラフシャン川沿いの地域からカラクム砂漠を通る約866kmの交易路です。
ざっくりですが下図の赤で囲った部分がザラフシャン=カラクム回廊です。

赤く囲った部分を拡大すると以下のようになります。右からタジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンです。色が濃い部分が3か国に跨るザラフシャン=カラクム回廊です。タジキスタンの北西部のソグド州〜ウズベキスタン〜トルクメニスタン南東部のマル州まで3カ国を跨いでいます。ここに点在する34件の施設が「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」として世界遺産に登録されました。

「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」は以下の理由で世界遺産に登録されました。
・オアシス都市やキャラバンサライ、宗教施設などが良好な状態で残っている
・それらはシルクロードの一部として東西文化交流における役割を持った貴重な遺跡群である
登録名 | シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊 (Silk Roads: Zarafshan-Karakum Corridor) |
登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2)、(3)、(5) |
登録年 | 2023年 |
シルクロード関連の世界遺産は2014年に「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」が登録されています。こちらは中国、カザフスタン、キルギスを跨ぐ天山回廊に関連した史跡で構成されています。今回の「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」はシルクロード関連の世界遺産第2弾となります。
構成資産
世界遺産「シルクロード:ザラフシャン=カラクム回廊」は3ヵ国に跨ぐ計34件の資産で構成されています。国ごとに一部写真付きで紹介していきます。全ての構成資産はGoogle Mapにリンクさせてありますが、情報があまりない物件がほとんどです。
タジキスタン
タジキスタンの構成資産は全9件です。ザラフシャン川沿いの資産が多く、全てソグド州内にあります。集落や城塞の史跡が多いです。TJ-09「古代パンジケントの都市遺跡」以外は山岳地帯に位置してます。地図上のTJ-01~TJ-09が構成資産です。


写真:Visit Central Asiaより

写真:Wikipediaより
ウズベキスタン
ウズベキスタンの構成資産は全16件と3カ国で一番多く、サマルカンド州、ナヴォイ州、ブハラ州に跨ります。モスク、廟、ネクロポリスなど今でも残ってるイスラム建築が主に登録されています。全て平野部に位置しています。地図上のUZ-01~UZ-15が構成資産です。2023年のウズベキスタンの旅でブハラ滞在の際、近郊にあるUZ-12「バハウッディン・ナクシュバンド建築群」とUZ-13「チョルバクル大墓地」を観光してきました。世界遺産に登録された直後の訪問でした。詳細記事は施設名にリンク貼ってあります。


写真:Wikipediaより

写真:Wikipediaより

詳細はこちら。


トルクメニスタン
トルクメニスタンの構成資産は全9件で、レバプ州、マル州に跨ります。キャラバンサライ(隊商宿)の史跡が多く、全て砂漠地帯に位置してます。地図上のTM-01~TM-07が構成資産です。


写真:Wikipediaより

写真:Wikipediaより