2024年4~5月のポルトガル旅行記です(料金は2025年12月調べのものを記載してます)。
ポルトガル中部の街アルコバッサ(Alcobaça)へ。目的は世界遺産「アルコバッサ修道院」です。
この記事ではアルコバッサ修道院はどういった世界遺産なのか、歴史、入場料金や観光の見どころも踏まえて紹介していきます。
世界遺産「アルコバッサ修道院」とは?
アルコバッサ修道院は1989年に世界遺産として登録されました。ポルトガル最古のゴシック建築の教会を持つ修道院です。

ポルトガル中部の街アルコバッサは、リスボンから120キロほどの地点にあります。リスボンからアルコバッサまでは長距離バスでアクセス可能です。
バターリャからの行き方になりますが、参考記事です。

アルコバッサ修道院は以下の理由で世界遺産に登録されました。
- アルコバッサ修道院は、その壮大な規模、建築様式の明快さ、使用された材料の美しさ、そして建設における綿密な配慮により、シトー修道会のゴシック美術の傑作である(登録基準1)。
- アルコバッサ修道院は、水利システムと機能的な建物という独自のインフラを備えた、偉大なシトー会修道院の例であること(登録基準4)。
| 登録名 | アルコバッサ修道院 (Monastery of Alcobaça) |
| 国 | ポルトガル |
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 登録基準 | (1)、(4) |
| 登録年 | 1989年 |
アルコバッサ修道院の歴史
世界遺産アルコバッサ修道院の簡単な歴史です。
1139年にポルトガル王国を創始した初代国王アフォンソ1世(アフォンソ・エンリケス)は、1152年にレコンキスタでサンタレンを征服後、アルコバッサの地をシトー修道会に与えました。
その後1178年からシトー修道会の修道院として、アルコバッサ修道院の建築が始まりました。
完成後も増改築が繰り返されましたが、ポルトガル最古のゴシック様式をもつ教会をはじめ中世の建築群がそのまま残っています。
1989年に世界遺産として登録されました。
場所・料金・営業時間
世界遺産アルコバッサ修道院の場所は以下となります。
入場チケットの料金と営業時間は以下となります(2025年12月調べ)。2024年4月の訪問時点では10ユーロでしたが、現在は15ユーロになっているようです。詳細は公式サイトにて(日本からだとアクセスできないかも)。
- 料金:15ユーロ(リスボアカードがあれば無料で入れます)
- 営業時間:9:00~18:30(4月~9月)/9:00~17:30(10月~3月)
アルコバッサ修道院の全体図
アルコバッサ修道院の全体図です。主な見どころの施設に番号を付けています。西側の赤矢印が入口で、入ってから矢印の方(左手)に進んでいくとチケット売り場があります。そこから①ディニス王の回廊へ行く流れです。基本的にはディニス王の回廊を回りつつ各施設(②~⑦)へアクセスする感じです。ちなみに⑧教会は無料なので教会のみ見る場合は、チケット売り場へ行かず入口からそのまま教会へアクセスできます。観光の所要時間は1~2時間程度かなと思います。

①ディニス王の回廊
②食堂
③厨房
④僧の広間
⑤枢機卿の回廊
⑥参事会室
⑦王の広間
⑧教会
主な見どころ
アルコバッサ修道院の主な見どころを紹介していきます。メインとなる見どころは①ディニス王の回廊と⑧教会にあるゴシック芸術の傑作である石棺あたりかなと思います。それ以外にも、②食堂や③厨房などシトー会の修道士の生活を垣間見れる施設も多いので、それらも見逃せません。
外観
正面です。18世紀に改築されたバロック様式のファサードで迫力があります。他の部分がシンプルなので、かなり際立ってます。

聖人の彫像やバラ窓など細かく見ていくと、これだけでお腹いっぱいになりそうです。

メインエントランスです。

入ってから左手に進んでいくとチケット売り場があります。ここから①ディニス王の回廊へアクセスできます。

①ディニス王の回廊
14世紀初頭のディニス王時代に建造されたディニス王の回廊です。初期ゴシック様式の回廊です。当時この場所で会話が禁じられていたことから「沈黙の回廊」とも呼ばれています。修道院の各施設はこの回廊を中心に配置されています。

2連や3連のアーチが特徴です。装飾はそこまで派手ではありません。シトー修道会は徹底した質素・倹約な生活で知られており、建物も華美な装飾を排除し、機能性と精神性を重視したものが多いです。

中庭です。2階部分は16世紀に建築家ジョアン・デ・カスティーリョ(リスボンのジェロニモス修道院を手掛けた、マヌエル様式を代表する建築家)によりマヌエル様式で増築されました。

2階部分は途中で上がる階段があるのでそこからアクセスできます。2階の回廊もかなり質素な感じです。

他の修道院の回廊で見られるような派手なマヌエル様式ではなく、柱などに部分的に装飾されているのみです。1階と同じく2連または3連のアーチになっています。

雨水の排水管ですかね?なんか可愛らしいですね。
②食堂
食堂です。かなり広いです。こちらもシンプルな造りです。

説教壇です。食事中に聖書を朗読したりしていたのでしょうね。

壁にはかなり狭い扉があります。修道士の太り過ぎをチェックするためのもので、ここを通れない修道士は食事制限が言い渡されたらしいです。質素・倹約な生活を追求するシトー修道会ならではのシステムですね。

実際立ってみると分かりますが、とても狭いです…。

③厨房
続いては厨房へ。17~18世紀頃に建造されました。ここで何百人もの食事が作られていました。

洗い場?もしっかり残っています。近くの川から厨房まで水を引き込めるようなシステムが構築されているとのことです。インフラのレベルが高いです。

巨大な煙突です。

中も覗くことができます。

④僧の広間/⑤枢機卿の回廊
こちらは僧の広場です。厨房が建造されてからはここは食糧庫として使われていたとのことです。

2階に行けます。2階は修道士の寝室になっています。1階と同じような造りです。寝室とのことですが、別に個室があるわけでもないです。共同生活で雑魚寝ですかね。

僧の広間の隣は枢機卿の回廊になっています。16~17世紀頃に建造されました。こちらには個室の宿舎が設けられており、修道院長など位の高い人が寝泊まりしていたかなと想像します。

⑥参事会室
参事会室です。修道院の運営を話し合う部屋ですが、歴代修道院長が埋葬されている場でもあります。

歴代修道院長の彫像がずらりと並んでいます。

参事会室の入口部分ですが、多数の柱が並んでおり、けっこう豪快な造りです。柱頭の植物模様を楽しめます。


⑦王の広間
18世紀建造の王の広間です。修道士らは芸術活動もしており、彼らにより作成された歴代国王の彫像(初代王アフォンソ1世~ジョゼ1世まで)が飾ってあります。


アルコバッサ修道院創建の伝説を描いたアズレージョも飾られています。

⑧教会
最後に訪問したのは教会です。無料エリアになります。以下は教会の図面です。

三廊式の教会です。以下は身廊です。かなり質素ですが、荘厳さが伝わってきます。天井の高さは23mとバターリャ修道院の教会よりも大分低いですが、奥行きは106mもあります。

尖頭アーチの多用や天井の交差リブヴォールトなど、典型的なゴシック建築の教会です。

こちらは主祭壇です。ゴシック教会と言えばステンドグラスのイメージがありますが、1つもありません。華美な装飾を排除するシトー修道会ならではなのかなと思います。

教会の翼廊部分に美しい2つの石棺が安置されています。ポルトガル・ゴシック芸術の最高傑作と言われています。アルコバッサ修道院の最大の見どころかと思います。2つの石棺はそれぞれペドロ1世(右翼廊)とイネス・デ・カストロ(左翼廊)です。2人の間には以下のような悲劇的な愛の物語があります。
『アフォンソ4世の王太子ドン・ペドロ(後のペドロ1世)は、女官であるイネス・デ・カストロと恋仲になり、正妻コンスタンサ・マヌエルを省みず、不倫の愛に溺れていました。正妻コンスタンサが亡くなった後、王子ペドロとイネスとの間にも子供ができ、ペドロは愛の生活を送っていました。公務をないがしろにしていたペドロに怒ったアフォンソ4世は家臣に命じ、ペドロの不在の間についにイネスを亡き者にしました。後に王位についたペドロは、イネスを正式な妻として教会に認めさせ、イネス殺害に関わった者を全て処刑しました。』
イネスを亡くしたペドロ1世はその後、二度と結婚せず独身を通しており、この悲劇はポルトガルの詩や伝説の中で永く語り継がれています。
こちらがペドロ1世の石棺です。全体的に質素な印象のアルコバッサ修道院の中で華やかさを放っています。

イネス・デ・カストロの石棺です。2人が起き上れば対面できるように、お互い足を向け合うように配置されています。

右翼廊をさらに進むと、18世紀建造の王室パンテオンがあります。王家の石棺がいくつか安置されています。


主祭壇からさらに奥に進んだところには16世紀建造の聖具室があります。中には入れませんでした。入口は建築家ジョアン・デ・カスティーリョによるマヌエル様式の美しい装飾が施されています。


まとめ
世界遺産アルコバッサ修道院の観光の見どころまとめです。
- ポルトガル最古のゴシック建築の教会がある
- 最大の見どころは教会翼廊の美しい2つの石棺(ポルトガル・ゴシック芸術の最高傑作)
- 各施設は全体的に簡素な感じ
- 観光の所要時間は1~2時間程度







