2023年4月のカンボジア旅行記です。
タイとの国境にある世界遺産「プレアヴィヒア」へ。海抜625mの断崖の頂上にある山岳式のヒンドゥー教寺院で、カンボジアの大地を広く見渡せます。
世界遺産プレアヴィヒアとは?
登録名 | プレアヴィヒア寺院 |
登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1) |
登録年 | 2008年 |
プレアヴィヒアは2008年に「プレアヴィヒア寺院」という名前で世界文化遺産に登録されました。
アンコール朝時代の寺院ですが、世界遺産「アンコール」には含まれず、1寺院のみで世界遺産に登録されています。カンボジアでは世界遺産「アンコール」に続き、2番目の世界遺産となりました。
シェムリアップから250kmほど北の山岳地帯にあり、海抜625mの断崖に建てられています。タイとの国境沿いにあり、頂上からはタイやカンボジアの広々とした大地を見渡すことができます。
南北を基軸とした寺院で、5つの塔門が北から南へ約800mほどに渡り一直線上に配置されています。
プレアヴィヒアの歴史
創設年 | 9世紀末(数世紀に渡り増改築) |
創設者 | ヤショーヴァルマン1世 |
宗教 | ヒンドゥー教シヴァ派 |
形態 | 山岳式/展開式 |
建築材 | 砂岩 |
プレアヴィヒアはクメール語で「神聖な寺院」という意味です。9世紀末頃にヤショーヴァルマン1世(在位889〜910年)により、断崖の頂上に建造されたヒンドゥー教寺院です。ヤショーヴァルマン1世は、現在のアンコール遺跡群がある地域に都城ヤショーダラプラを建設し、プノン・バケン寺院などを造った名君です。
プレアヴィヒア寺院は、その後11世紀前半にスーリヤヴァルマン1世、12世紀前半にスーリヤヴァルマン2世により大幅に増改築されました。現在寺院内で見れる1番古い建築物は10世紀前半頃のものですが、大部分は増改築された以降のものとなります。
クメールの寺院はほぼ東西が基軸となっていますが、プレアヴィヒア寺院は珍しく南北が基軸となっています。北から南へ向かい、5つ門を通ると中央祠堂に辿り着きます。中央祠堂の先は断崖絶壁となり、カンボジアの大地を一望できます。
プレアヴィヒア寺院はカンボジアとタイの国境線に位置するため、その帰属に関しては長年争われていました(歴史的にも両国は領土を巡る争いが多い)。1962年に国際司法裁判所により正式にカンボジア領土となりましたが、2008年の世界遺産登録を契機に国境線画定問題が再燃し、カンボジア軍とタイ軍による銃撃戦など軍事衝突が起きました。10年近く衝突は続きましたが、現在では軍はほぼ撤退して緊張状態は和らいでおり、観光できるようになっています。
プレアヴィヒアへの行き方
プレアヴィヒア寺院は、シェムリアップから250kmほどのタイとの国境の山岳地帯にあり、海抜625mの断崖に建てられています。
シェムリアップから車で3〜4時間ほどです。自力で行くよりツアーを使うのが賢明かと思います。
今回はシェムリアップの日本人宿「blank」でガイドなしのツアーを予約しました。宿泊してませんでしたが、ツアー参加OKでした。プレアヴィヒアに加えて、コー・ケーとベンメリアもセットになった日帰りのツアーで、料金は200ドル(入場料などは込まず)でした。車1台分の料金なので参加人数で割ることができました。今回参加者が全部で3人だったのでかなりお得でした。
他のツアーも色々調べましたが、遠方の3遺跡に行けてこの値段はかなり安いかと思います。
プレアヴィヒアの料金・営業時間
プレアヴィヒア寺院の入場料は、10ドルでした(2023年4月時点)。
また、山頂まで行くには、入場チケット以外にバイクタクシーもしくは四輪駆動車の乗車チケットを購入しなければいけません。今回はバイクタクシーを利用しました。5ドルでした。
プレアヴィヒア寺院のチケットは麓の販売所で購入することになります。駐車場スペースのある広い敷地でした。
カウンターが設置されているので、そこで購入できます。ちなみにバイクタクシーのチケットも合わせて購入しました。
プレアヴィヒアの営業時間は8:30~16:30です。シェムリアップからだと時間がかかるので、余裕を持って朝早めの出発がよいですね。
いざ山頂へ
目の前に見える山へ向かいます。壮大な景色ですね。
バイク移動は慣れてなく、さらに登り坂なので若干踏ん張りが必要でした。事故らなくてよかったです。
到着しました。賑わってきますね。
ここからは徒歩で寺院に向かいます。
プレアヴィヒアの全体図
プレアヴィヒア寺院は、クメール建築では珍しく南北を基軸としており、北から南へ5つの塔門を通り中央祠堂へ行けます。南北の長さは約800mです。参道が丘を登る形で南に伸び、各門の手前には階段があります。南端は北端より120mほど高くなっています。
■第一塔門~第二塔門■
駐車場から少し歩くとナーガの欄干に到着します。第一塔門から第二塔門まで、第二塔門から第三塔門まで、少し長めの参道を歩きます。
■第三塔門~断崖■
長い参道の先には第三塔門があり、その後第四、第五塔門を越えると中央祠堂があります。その先は断崖絶壁となっており絶景を拝めます。
ナーガの欄干から第一塔門へ
寺院の入口に到着です。まずはナーガ像がです。
左手には下りる階段があります。ここを進むとタイとの国境線ですが、一般人は行けないようになっています。
ナーガの欄干の道を進みます。階段の先に見えるのは第一塔門です。
第一塔門はかなり崩壊してました。
左手に門の一部のみ残っていました。修復中でした。美しいことで有名で、カンボジアの2000リエル紙幣に描かれています。破風の両端の渦巻き模様は、バンテアイ・スレイやコー・ケー遺跡で一部見られる様式です。アンコール朝の遺跡では珍しい形です。
第二塔門
第一塔門を越え、長い参道を歩きます。空が広くて気持ち良いです。
第二塔門への階段です。南に向かうにつれ、標高が少しずつ上がっていきます。
第二塔門です。
第二塔門の出口の破風には、ヒンドゥー教神話の「乳海攪拌」のレリーフがありました。
綱(大蛇)を引いてる様子が分かりますね。下のまぐさには、少し分かりにくいですが大蛇アナンタの上に横たわるヴィシュヌ神がいます。
塔門の壁や柱はそれなりに残っていました。
第三塔門
第二塔門を越え、さらに参道を歩きます。
第三塔門への階段を上がります。体力が必要な遺跡ですね。
第三塔門です。半壊はしてますが堂々と建っています。しかし本当に空が綺麗ですね。
内部に入ります。
破風の美しいレリーフです。山を持ち上げるクリシュナ(ヴィシュヌ神の化身の1つ)です。下のまぐさにはお馴染みのカーラ、その上にはガルーダに乗るヴィシュヌ神がいます。
別の開口部破風には、カーラとその上にナンディン牛に乗るシヴァ神がいます。
屋根部分は崩壊してますが、元々木製の屋根で覆われていたとのことです。
第三塔門のあるエリアでは、タイ側を見下ろすことができます。
第四・第五塔門から中央祠堂へ
続いて第四塔門です。入口はかなり崩壊してました。
さらに進むとすぐに第五塔門があります。
経蔵と壁の間を通り、中に入ります。
第五塔門内には、中央祠堂がありました。かなり崩壊していますが立派な入口部分は残っていました。
破風には踊るシヴァ神です。可愛らしいですね。
中央祠堂の崩壊した砂岩が積んであります。砂岩に空いてる穴は、カンボジアとタイの軍事衝突の際の銃撃戦の跡でしょうか。悲しい歴史を持つ場所でもあります。
周りを囲む回廊はしっかり残っていました。
回廊内部です。人がすれ違うのが大変なくらい幅はかなり狭いです。
断崖からの絶景
中央祠堂の先は大きな空が広がっています。開放的です。
すぐそこは断崖絶壁です。絶景が待ってます。長い道を歩いてきたご褒美ですね。
カンボジアの広い大地が見渡せます。プレアヴィヒア寺院が「天空の寺院」と呼ばれる所以です。
絶景を後にして、元の道を戻ります。
まとめ
プレアヴィヒアのまとめです。
- 海抜625mの断崖の上に造られた天空の寺院
- クメール建築では珍しい南北を基軸とした寺院
- 建物は大分壊れているが、美しいレリーフは見ることができる
- カンボジアの大地を見渡せる絶景スポットがある
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