カンボジア

【世界遺産】アンコール⑬「プリア・コー」当時の痕跡を残すアンコール朝初期の寺院

プリア・コーカンボジア

2023年4月のカンボジア旅行記です。

世界遺産「アンコール」巡りです。中心部であるアンコール遺跡群から南東に位置するロリュオス遺跡群の1つ「プリア・コー」へ。

シンプルなレンガ造りのアンコール朝初期の寺院です。建設当時は祠堂群全体に漆喰が塗られており、その痕跡を見ることができます。

世界遺産アンコールとは?

登録名アンコール
登録区分文化遺産
登録基準(1)、(2)、(3)、(4)
登録年1992年危機遺産として登録→2004年文化遺産として登録

世界遺産「アンコール」は、シェムリアップ近郊に位置する、クメール王国アンコール朝時代(802〜1431年)の寺院遺跡群です。アンコール・ワットをはじめとしたヒンドゥー教寺院群で、仏教寺院もあります。レンガや砂岩で造られた芸術的な建築物は大変見応えがあります。

1992年に危機遺産(武力紛争、自然災害などで危機に晒されている遺産)として登録され、2004年に危機遺産を脱し、世界文化遺産として改めて登録されました。

世界遺産アンコールの範囲は、「アンコール遺跡群」「ロリュオス遺跡群」「バンテアイ・スレイ」の3つのエリアからなります。以下の地図はアンコール遺跡のサイトからお借りしました。シェムリアップを拠点に観光することになります。

世界遺産アンコールマップ

以下が「アンコール」のエリア別の構成資産です。

アンコール遺跡群

  • 中心部】:アンコール・ワット / アンコール・トム(バイヨン、バプーオン、ピミアナカス、象のテラス、ライ王のテラス、プラサット・スゥル・プラット、南北クリアン、プリア・パリライ、プリア・ピトゥ) / プノン・バケン / バクセイ・チャムクロン / トマノン / チャウ・サイ・テヴォーダ
  • 東部】:プレ・ループ / タ・ケウ / バンテアイ・サムレ / タ・プローム / スラ・スラン / プラサット・バッチュム / バンテアイ・クデイ / 東メボン / プラサット・クラヴァン
  • 北部】:プリア・カン / ニャック・ポアン / タ・ソム / クロル・コー
  • 西部】:西バライ / 西メボン / アック・ヨム

ロリュオス遺跡群

  • プリア・コー
  • バコン
  • ロレイ

バンテアイ・スレイ

  • バンテアイ・スレイ

クメール王国(アンコール朝)の歴史

アンコール地方の遺跡群を造ったクメール王国(アンコール朝)の歴史です。

アンコール王朝の前身であるヒンドゥー教国家「真臘」(しんろう)は、南北に分裂し弱体化していましたが、802年にジャヤヴァルマン2世が統一することでアンコール朝が始まりました。首都はハリハラーラヤ(ロリュオス遺跡群)としました。

889年にヤショーヴァルマン1世が、アンコール地域に都城ヤショーダラプラ(後のアンコール・トムを含んだエリア)を建設しました。都の中心としてプノン・バケン寺院が建造されました。

都は一時的にチョック・ガルギャー(コー・ケー)に遷都されるも、すぐにヤショーダラプラに再遷都され、これ以降プレ・ループ、バンテアイ・スレイ、タ・ケウ、ピミアナカス、バプーオンなど各地にたくさんの寺院が造られました。

1113年に王位に就いたスーリヤヴァルマン2世は領土を拡大し、全盛期を迎えます。アンコール・ワットはじめ、トマノンやバンテアイ・サムレなどを建造しました。

1177年にベトナム中部のチャンパーにより首都ヤショーダラプラが陥落し、アンコール地域が占領されるも、1181年に即位したジャヤヴァルマン7世が奪還し、新たに都城アンコール・トムを建設しました。ジャヤヴァルマン7世は大乗仏教の熱心な信者であったため、トム内のバイヨンをはじめ、バンテアイ・クデイ、タ・プローム、プリア・カン、タ・ソムなど、たくさんの仏教寺院を建造しました。

アンコール朝の領土
ASEANトラベルより

1431年にタイのアユタヤ朝が侵攻し、アンコール・トムが陥落しました。クメール王国はアンコールを放棄することになり、アンコール朝は終わりを迎えました。これ以降クメール王国は首都を転々とし、タイやベトナムなど外敵の侵入に脅かされる暗黒時代を迎えました。

プリア・コーとは?

創設年879年
創設者インドラヴァルマン1世
宗教ヒンドゥー教シヴァ派
形態平地式/展開式
建築材レンガ

プリア・コーはアンコール遺跡群の南東、シュムリアップからは東へ約13kmあたりに位置します。プリア・コーは「聖なる牛」という意味で、シヴァ神の乗り物である聖牛ナンディンに由来します。

環濠に囲まれた寺院です。東西97m、南北94mの周壁の中に、さらに東西58m、南北56mの内壁があり、中心には基壇上に6基のレンガ祠堂群が配置されているシンプルな構成です。

プリア・コーは、アンコール朝初期の都ハリハラーラヤにて、879年にインドラヴァルマン1世(在位877〜889年)により建造されました。ハリハラーラヤ時代の寺院遺跡は、ロリュオス遺跡群と呼ばれており、「プリア・コー」「バコン」「ロレイ」の3寺院により構成されます。

東側から入場すると、前後に3基ずつ祠堂が並んでいる配置に見えますが、前列真ん中の中央祠堂はアンコール朝の創始者ジャヤヴァルマン2世に捧げられており、左側(南側)の祠堂はインドラヴァルマン1世の父、右側(北側)の祠堂はインドラヴァルマン1世の祖父に捧げられています。後列3つの祠堂はこれら3人のそれぞれの妻に捧げられています。

建設当時は全ての祠堂に漆喰が塗られ、真っ白だったとのことです。現在でもその痕跡を見ることができます。

以下ではクメール建築を楽しむためのポイントを紹介しています。ご覧ください。

クメール建築(世界遺産アンコールなど)を楽しむための7つのポイント
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料金・営業時間

プリア・コーは「アンコールパス」というチケットで入場できます。

チケット詳細とおすすめ観光ルートを以下の記事で紹介しています。

世界遺産アンコールのチケット「アンコールパス」&遺跡巡りのルート解説!
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プリア・コーの営業時間は7:30〜17:30です。

プリア・コーの全体図

図には書いてませんが、周囲には環濠があり、2重のラテライト周壁(外壁:東西97m、南北94m/内壁:東西58m、南北56m)の内側に、6基のレンガ祠堂が同じ基壇上に配置されています。

プリア・コー

美しいレンガ祠堂群

東塔門から入ります。世界遺産のモニュメントです。

プリア・コー

東塔門は建物は崩れており、基壇のみでした。

プリア・コー

連子状窓が配置されています。

プリア・コー
プリア・コー

さらに進んだ先にある東楼門は跡形もなく崩壊しており、中心の祠堂群が見えます。ラテライトの周壁もほとんど崩れていました。

プリア・コー

寺院内部には祠堂群以外に、立派なレンガの建物が1基ありました。

プリア・コー

祠堂群は前列に3基、後列に3基の計6基ですが、6基を全てを同時に写真に捉えることはできませんね。ちなみに1基は修復中でした。

プリア・コー

祠堂群の手前には、祠堂と対面するようにナンディン象がありました。プリア・コーの由来となった聖牛です。シヴァ神の乗り物でもあります。

プリア・コー

当時の漆喰の跡

中心にある中央祠堂です。アンコール朝を開いたジャヤヴァルマン2世に捧げられた祠堂です。祠堂を護るシンハ像は比較的綺麗に残っています。

プリア・コー

中央祠堂の入り口です。ここで特に左側を注目して欲しいのですが、白い部分があります。これは漆喰の跡です。建設当時は全ての祠堂が漆喰を塗られおり、その上からレリーフが彫られていました。現在では剥がれ落ちて残った部分を見ることができます。白い祠堂が立ち並んでいたと想像すると感動的です。色々と想像して楽しむのも遺跡鑑賞の醍醐味の1つですね。

プリア・コー

金剛力士像のレリーフがかなり綺麗です。修復されたものでしょうか。周りには漆喰の跡がしっかり残っていますね。

プリア・コー
プリア・コー

他の祠堂にも建設当時の漆喰の跡が残っていますね。

プリア・コー
プリア・コー

偽の扉上部のまぐさです。アンコール遺跡では定番のカーラのレリーフです。ナーガに乗った神々も描かれています。どの祠堂も開口部は東側で、それ以外は偽扉となっていました。

プリア・コー

こちらは開口部のまぐさのレリーフです。ナーガが描かれてます。

プリア・コー

美しい迫り出し構造

寺院境内には祠堂群以外に修復済みの綺麗なレンガの建物がありました。用途はよく分かりません。経蔵なのか宝物庫なのか。

プリア・コー

入り口の砂岩の開口部分の上は、迫り出し構造でレンガが綺麗に積まれていました。建物上部にはスリット状窓がありました。レンガを抜いて造られた窓です。

プリア・コー

内部も非常に美しいです。少しずつずらしてレンガが積まれています。このような迫り出し構造の屋根は砂岩でもありますが、レンガだとより綿密な積み方になり、さらに美しさを感じます。クメール建築の醍醐味の1つですね。

プリア・コー

まとめ

プリア・コーのまとめです。

  • アンコール朝初期の寺院で伽藍配置はとてもシンプル
  • レンガ祠堂群は全て当時は漆喰を塗られており、その痕跡を見ることができる
  • 寺院内に建つレンガ建築では素晴らしい迫り出し構造の屋根を見ることができる

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