2023年4月のカンボジア旅行記です。
世界遺産「アンコール」観光です。中心部であるアンコール遺跡群から南東に位置するロリュオス遺跡群の1つ「プリア・コー」へ。シンプルなレンガ造りのアンコール朝初期の寺院です。建設当時は祠堂群全体に漆喰が塗られていたらしく、その痕跡を見ることができます。
世界遺産アンコールの全体の解説はこちら。アンコール朝の歴史と世界遺産を構成する各寺院を紹介しています。

プリア・コーとは?
創設年 | 879年 |
創設者 | インドラヴァルマン1世 |
宗教 | ヒンドゥー教シヴァ派 |
形態 | 平地式/展開式 |
建築材 | レンガ |
プリア・コーは「聖なる牛」という意味で、シヴァ神の乗り物である聖牛ナンディンに由来します。
環濠に囲まれた寺院です。東西97m、南北94mの周壁の中に、さらに東西58m、南北56mの内壁があり、中心には基壇上に6基のレンガ祠堂群が配置されているシンプルな構成です。
プリア・コーは、アンコール朝初期の都ハリハラーラヤにて、879年にインドラヴァルマン1世(在位877〜889年)により建造されました。ちなみにハリハラーラヤは「ハリハラの都」という意味で、ハリハラはシヴァ神とヴィシュヌ神の合体神です。ハリハラーラヤ時代の寺院遺跡は、ロリュオス遺跡群と呼ばれており、「プリア・コー」「バコン」「ロレイ」の3寺院により構成されます。
東側から入場すると、前後に3基ずつ祠堂が並んでいる配置に見えますが、前列真ん中の中央祠堂はアンコール朝の創始者ジャヤヴァルマン2世に捧げられており、左側(南側)の祠堂はインドラヴァルマン1世の父、右側(北側)の祠堂はインドラヴァルマン1世の祖父に捧げられています。後列3つの祠堂はこれら3人のそれぞれの妻に捧げられています。
建設当時は全ての祠堂に漆喰が塗られ、真っ白だったとのことです。現在でもその痕跡を見ることができます。
以下ではクメール建築を楽しむためのポイントを紹介しています。ご覧ください。

場所・料金・営業時間
「プリア・コー」「バコン」「ロレイ」からなるロリュオス遺跡群は、アンコール遺跡群の南東、シュムリアップからは東へ約13kmあたりに位置します。ロリュオス遺跡群は、アンコール観光の小回り・大回りコースに入っていない遺跡群です。トゥクトゥクのドライバーにお願いしてシェムリアップからロリュオス遺跡群まで往復18ドルで連れて行ってもらいました(2023年4月時点)。
3つの遺跡は近いので、もしロリュオス遺跡群へ行ったら3つまとめて観光すると良いと思います。
ロリュオス遺跡群の寺院は「アンコールパス」というチケットで入場できます。
チケット詳細とおすすめ観光ルートを以下の記事で紹介しています。

プリア・コーの営業時間は7:30〜17:30です。
プリア・コーの全体マップ
プリア・コーの全体マップです。図には書いてませんが周囲には環濠があり、2重のラテライト周壁(外壁:東西97m、南北94m/内壁:東西58m、南北56m)の内側に、6基のレンガ祠堂が同じ基壇上に配置されています。観光の所要時間は30分が目安です。

美しいレンガ祠堂群
東塔門から入ります。世界遺産のモニュメントです。

東塔門は建物は崩れており、基壇のみでした。

連子状窓が配置されています。


さらに進んだ先にある東楼門は跡形もなく崩壊しており、中心の祠堂群が見えます。ラテライトの周壁もほとんど崩れていました。

寺院内部には6つの祠堂群以外に、立派なレンガの建物が1基ありました。何に使われていたのでしょうか?

レンガ祠堂群は前列に3基、後列に3基の計6基ですが、6基を全てを同時に写真に捉えることはできませんね。ちなみに1基は修復中でした。

祠堂群の手前には、祠堂と対面するようにナンディン象がありました。プリア・コーの由来となった聖牛です。シヴァ神の乗り物でもあります。

当時の漆喰の跡
中心にある中央祠堂です。アンコール朝を開いたジャヤヴァルマン2世に捧げられた祠堂です。祠堂を護るシンハ像は比較的綺麗に残っています。

中央祠堂の入り口です。ここで特に左側を注目して欲しいのですが、白い部分があります。これは漆喰の跡です。建設当時は全ての祠堂が漆喰を塗られおり、その上からレリーフが彫られていました。現在では剥がれ落ちて残った部分を見ることができます。真っ白の祠堂が6つ立ち並んでいたと想像すると感動的です。色々と想像して楽しむのも遺跡観光の醍醐味の1つですね。

金剛力士像のレリーフがかなり綺麗です。修復されたものでしょうか。周りには漆喰の跡がしっかり残っていますね。


他の祠堂にも建設当時の漆喰の跡が残っていますね。


偽の扉上部のまぐさです。アンコール遺跡では定番のカーラのレリーフです。ナーガに乗った神々も描かれています。どの祠堂も開口部は東側で、それ以外は偽扉となっていました。

こちらは開口部のまぐさのレリーフです。ナーガが描かれてます。

美しい迫り出し構造
寺院境内には6つの祠堂群以外に修復済みの綺麗なレンガの建物がありました。用途はよく分かりません。経蔵なのか宝物庫なのか。

入り口の砂岩の開口部分の上は、迫り出し構造でレンガが綺麗に積まれていました。迫り出し構造はレンガや砂岩を少しずつずらして積み上げていく建築技術です。重力が開口部に直接かからず左右に分散されるのでが崩れ落ちません。建物上部にはスリット状窓がありました。レンガを抜いて造られた窓です。

内部も非常に美しいです。少しずつずらしてレンガが積まれています。このような迫り出し構造の屋根は砂岩でもありますが、レンガだとより綿密な積み方になり、さらに美しさを感じます。クメール建築の醍醐味の1つですね。

まとめ
世界遺産ロリュオス遺跡群の「プリア・コー」観光のまとめです。
- アンコール朝初期の寺院で伽藍配置はとてもシンプル
- レンガ祠堂群は全て当時は漆喰を塗られており、その痕跡を見ることができる
- 寺院内に建つレンガ建築では素晴らしい迫り出し構造の屋根を見ることができる
- 観光の所要時間は30分が目安