2024年4~5月のポルトガル旅行記です(料金は2025年12月調べのものを記載してます)。
ポルトガル中部の街バターリャ(Batalha)へ。目的は世界遺産「バターリャ修道院」です。
この記事ではバターリャ修道院はどういった世界遺産なのか、歴史、入場料金や観光の見どころも踏まえて紹介していきます。
世界遺産「バターリャ修道院」とは?
「バターリャ修道院」は、1983年に世界遺産に登録されました。
バターリャ修道院はポルトガル中部の小さな街バターリャにあります。リスボンから約150キロほどの所に位置しています。リスボンから長距離バスでアクセスが可能です。
参考記事です(トマールからの行き方にはなりますが)。

バターリャは「戦い」という意味で、カスティーリャ王国との戦いに勝利したジョアン1世によって1385年に建築がスタートしました。15人もの建築家が関わり、完成したのが1517年とかなり時間がかかっています。
バターリャ修道院の正式名称は「聖母マリア修道院」です。ポルトガルの後期ゴシック建築の傑作と言われています。何世紀にも渡り増改築されており、ルネサンス様式やポルトガル独自のマヌエル様式も取り入れらています。

バターリャ修道院は以下の理由で世界遺産に登録されました。
- バターリャ修道院は、ゴシック芸術の傑作の 1 つであること(登録基準1)。
- 2世紀にも渡りポルトガル王家の重要な工房であり、ゴシック時代とルネサンス時代両方において、ポルトガル美術の優れた表現が数多く残されていること(登録基準2)。
| 登録名 | バターリャ修道院 (Monastery of Batalha) |
| 国 | ポルトガル |
| 登録区分 | 文化遺産 |
| 登録基準 | (1)、(2) |
| 登録年 | 1983年 |
バターリャ修道院の歴史
世界遺産バターリャ修道院の簡単な歴史です。
1383年アルジュバロータの戦いで隣国カスティーリャ王国を破った騎士団長ドン・ジョアンが、1385年にジョアン1世としてポルトガル国王に即位しアヴィス朝を創始しました。
ジョアン1世は戦いに勝利したことを聖母マリアに感謝し、ドミニコ修道会の修道院としてバターリャ修道院の建築をスタートさせました。
その後15人もの建築家が関わり何世紀にも渡り増改築されましたが、1502年に始まったリスボンのジェロニモス修道院の建設が重要視されたため、バターリャ修道院の増築は中止となり、一部未完成の部分を残した状態で1517年に一旦完成となりました。
1755年のリスボン大地震や19世紀初頭のスペイン独立戦争で大きな被害があるも、1840年にポルトガル王フェルナンド2世により修復され現在に至ります。
1983年には世界遺産に登録されました。
場所・料金・営業時間
世界遺産バターリャ修道院の場所は以下となります。
入場チケットの料金と営業時間は以下となります(2025年12月調べ)。2024年4月の訪問時点では10ユーロでしたが、現在は15ユーロになっているようです。詳細は公式サイトにて(日本からだとアクセスできないかも)。
- 料金:15ユーロ(リスボアカードがあれば無料で入れます)
- 営業時間:9:00~18:30(4/1~10/15)/9:00~18:00(10/16~3/31)
バターリャ修道院の全体図
世界遺産バターリャ修道院の全体図です。主な見どころの施設に番号を付けています。西側の赤矢印がメインエントランスです。⑥「未完の礼拝堂」のみ入口が別となっています。観光の所要時間は1~2時間あれば大体回れるかなと思います。

①教会
②創設者の礼拝堂
③参事会室
④ジョアン1世の回廊
⑤アフォンソ5世の回廊
⑥未完の礼拝堂
15人もの建築家が関わった修道院ですが、主な建築家と建築物をまとめると以下のようになります(間違ってたらすみません…)。ディエゴ・ボイタックとジョアン・デ・カスティーリョはリスボンのジェロニモス修道院も手掛ており、マヌエル様式を代表する建築家として有名です。
| 年代 | 建築家 | 主な建築物 |
| 1386~1402 | アフォンソ・ドミンゲス | ①教会 ③参事会 ④ジョアン1世の回廊 |
| 1402~1438 | デビッド・ユゲ | ①教会→高さを32mに改築 ②創設者の礼拝堂 ③参事会 ⑥未完の礼拝堂 |
| 1448~1447 | フエルニヤーオ・ド・エヴォラ | ⑤アフォンソ5世の回廊 |
| 1480~1515 | マテウス・フェルナンデス/ディエゴ・ボイタック | ④ジョアン1世の回廊→マヌエル様式導入 ⑥未完の礼拝堂→マヌエル様式導入 |
| 1515~ | ジョアン・デ・カスティーリョ | ⑥未完の礼拝堂→ルネサンス様式導入 |
主な見どころ
それではバターリャ修道院の主な見どころを順番に解説していきます。どこも見逃せないくらい素晴らしいですが、大きな見どころとしては、②創設者の礼拝堂と⑥未完の礼拝堂あたりかなと思います。
外観と入口
まず外観ですが、物凄く立派です。尖頭アーチの窓やフライングバットレス(屋根の重さを外から支えるアーチ状の構造)などゴシック建築の特徴を見ることができます。
こちらは正面(西側)です。他の地域のドミニカ修道会の建物と同じく鐘楼はありません。全体的に黄色っぽいのは経年劣化とのことです。


こちらは東側から見たものです。上部の中途半端に見える塔みたいなものは未完成の部分です(未完の礼拝堂)。

メインエントラスです。尖頭アーチ部分の装飾が物凄いことになっています。

タンパン(入口上のまぐさ)にはキリストの戴冠のレリーフ、さらに上のアーチ部分は6列になっており、天使や聖人などの像が彫られています。扉の左右には12使徒がいます。

①教会
内部へ。最初に見学したのは教会です。三廊式の教会です。教会は15世紀初頭に建築家デビッド・ユゲにより改築され、天井の高さが32mとなりました。また、奥行きも80mあり、ポルトガルの教会の中でも最大規模を誇ります。
こちらは身廊です。とても荘厳な雰囲気です。横幅はかなり狭く、とにかく天井の高さに圧倒されます。

尖頭アーチや多くのステンドグラス、天井の交差リブヴォールト、丸みのある柱など、典型的なゴシック様式です。ちなみにポルトガルの教会で初めてステンドグラスを取り入れたのはバターリャ修道院の教会とのことです。

こちらは側廊(身廊の右側)です。ステンドグラスを通して入った光が床に当たり、幻想的になっています。

主祭壇です。とてもシンプルな造りですが、放射線状にステンドグラスが配置され、たくさんの光が取り入れられているのが美しいです。

②創設者の礼拝堂
続いては創設者の礼拝堂へ。バターリャ修道院のメインの見どころの1つかなと思います。創設者とはバターリャ修道院建設を命じたポルトガル国王ジョアン1世のことです。建築家デビッド・ユゲにより15世紀初頭に造られました。
中央にジョアン1世とその王妃の石棺が配置されており、礼拝堂は八角形になっています。


ステンドグラスが本当に美しいです。天井は八角形ドーム。アーチ部分の装飾も見応えあります。


八角形礼拝堂の周囲にはジョアン1世の家族の石棺が並んでいます。ジョアン2世やアフォンソ5世、エンリケ航海王子らの石棺があります。

創設者の礼拝堂は入る前に受付がありそこで入場チケットを見せる必要があるのですが、チケットがあれば何度でも入れるようです。自分は修道院を全部見学した後、また見たくなって再入場しました。それほどこの場所は素敵でした。
③参事会室
14世紀後半に建築家アフォンソ・ドミンゲスが設計し、15世紀初頭に建築家デビッド・ユゲにより完成された参事会室です。結構広い空間ですが、柱が1本もありません。天井は壁とそこから伸びているリブのみで支えられています。絶妙なバランスになっているのでしょうね。

現在は第一次世界大戦で命を落とした無名の戦士2名の墓があり、ガードマンが2人立っています。

ステンドグラスが美しいです。撮影の時に光をステンドグラスに集めるように調整するとこんな感じで撮れます。

④ジョアン1世の回廊
ジョアン1世の回廊は、14世紀後半に建築家アフォンソ・ドミンゲスにより建造されました。その後1515年に建築家マテウス・フェルナンデスやディエゴ・ボイタックによりマヌエル様式の装飾が施されました。ゴシック様式の美しい回廊です。

アーチに施されたマヌエル様式の装飾もたくさん見ることができます。



回廊の中庭です。

回廊の北西部分にある噴水です。こちらも装飾が見応えあります。

ネコさんもくつろいでます。

⑤アフォンソ5世の回廊
アフォンソ5世の回廊です。ゴシック様式の回廊で、ポルトガル王アフォンソ5世時代の15世紀半ばに建設されました。設計したのは建築家フエルニヤーオ・ド・エヴォラです。装飾がほぼなく、ジョアン1世の回廊よりもかなりシンプルな印象です。

尖頭アーチの窓が2つで1セットになっています。


こちらは回廊の2階です。1階よりも簡素な感じです。

⑥未完の礼拝堂
最後に訪問したのは未完の礼拝堂です。バターリャ修道院のメインの見どころの1つかなと思います。未完の礼拝堂へのアクセスは、メインエントランスからではなく、東側の入口となります。入場チケットを見せて入ることができます。
ポルトガル国王ドゥアルテ1世(ジョアン1世の息子)時代の15世初頭、建築家デビッド・ユゲにより建設が始まり、その後建築家マテウス・フェルナンデスやジョアン・デ・カスティーリョらが携わりましたが、最終的に未完成となっています。未完成に終わった理由としては、リスボンのジェロニモス修道院建設のために建築家がそちらに動員されたためと言われています(設計ミスのためという説もあるらしい)。
入口です。15mの高さがあります。柵があって中に入ることができなくなっています。連続アーチ部分の精巧な装飾が本当に素晴らしいです。マテウス・フェルナンデスによりマヌエル様式の装飾が施されています。


マヌエル様式の特徴であるロープや植物をモチーフとした精巧な透かし彫りが見応えあります。



入口の先は八角形の礼拝堂で、未完成のため天井がありません。尖頭アーチを使ったゴシック様式の礼拝堂です。あまりよく見えませんが、上階部分はルネサンス様式が取り入れられているとのことです。

ライトアップされた修道院
バターリャ修道院は夜ライトアップされます。派手なライトアップではないですが、昼とはまた違った雰囲気を楽しむことができます。

正面(西側)です。

室内は明るくされているので、外からでもステンドグラスの美しさよく分かります。これは夜でしか見ることができません。

まとめ
世界遺産バターリャ修道院の観光・見どころのまとめです。
- 後期ゴシック建築傑作
- ステンドグラスがとても美しい
- 最大の見どころは創設者の礼拝堂と未完の礼拝堂かなと
- 夜はライトアップが楽しめる
- 観光の所要時間は1~2時間ほど




