2024年4〜5月のポルトガル旅行記です(料金などは2025年9月時点のものを分かる範囲で記載してます)。
リスボンの人気観光スポットであり、世界遺産でもある「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」へ行ってきました。16世紀のポルトガル大航海時代で得られた富で造られた圧倒的な建造物です。
この記事では「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」はどういった世界遺産なのか、見どころを踏まえて解説していきます。
世界遺産「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」とは?
世界遺産「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」は、その名前の通り、ポルトガルの首都リスボンのベレン地区にある「ジェロニモス修道院」と「ベレンの塔」で構成されています。1983年にポルトガル最初の世界遺産として登録されました。
どちらも16世紀のポルトガル王国アヴィス朝のマヌエル1世時代の建物です。大航海時代で得られた富で造られた豪華な装飾やレリーフなど見どころ万歳です。
参考記事:アヴィス朝時代の歴史はこちらから。

特にジェロニモス修道院は、15世紀後半~16世紀にポルトガルで流行った「マヌエル様式」の最高傑作と言われています。マヌエル様式は後期ゴシック建築、ルネサンス建築、イスラム建築の要素を複合的に取り入れており、最大の特徴は門や窓、柱やアーチ部分などに施されている巧妙で複雑な装飾です。渾天儀(航海計器でありマヌエル1世の個人的な紋章)、鎖、錨、ロープ、波、サンゴ、海草など、主に海や船に関連した豪華なレリーフが施されています。
「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」は以下の理由で世界遺産に登録されました。
- ポルトガルの大航海時代の栄光、開拓精神を今に伝える建造物であること:登録基準(3)
- これらの建造物は、異文化との接触や交流を生み出したポルトガルの先駆的な役割を今に伝えていること:登録基準(6)
登録名 | リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔 (Monastery of the Hieronymites and Tower of Belém in Lisbon) |
国 | ポルトガル |
登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3)、(6) |
登録年 | 1983年(2008年に緩衝地域の軽微な変更) |
①ジェロニモス修道院、②ベレンの塔はともにベレン地区にあります。
ジェロニモス修道院
まず世界遺産「ジェロニモス修道院」から解説していきます。ジェロニモス修道院は、大航海時代の幕を開いたエンリケ航海王子とインド航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマの偉業を称え、マヌエル1世により1502年に建築がスタートし、300年近くかけて完成しました。マヌエル様式の最高傑作とも言われ、ポルトガル大航海時代の代表的な記念碑です。
ヴァスコ・ダ・ガマがインドから持ち帰った香辛料による莫大な利益によって建築費用が賄われました。
行き方・料金
ジェロニモス修道院は、リスボンのベレン地区にあり、中心部のバイシャ地区から6~7km西に位置しています。バスまたはトラム(15E)なら「Mosteiro Jerónimos」停留所で降りて徒歩1分。鉄道ならCPシントラ線の「Belem」駅から徒歩10分くらいです。Google Mapで路線検索できます。
チケットは2023年4月時点では12ユーロでしたが、現在18ユーロに値上がりしています(2025年9月調べ)。入場料金などの詳細は公式サイトにて。リスボアカードがあれば無料になります。自分は24時間有効のリスボアカードを買って利用しました。リスボアカードは観光客にとってかなりお得になるチケットで、観光名所をいくつか巡れば大体元を取れます。詳しくは以下で解説しています。

営業時間は9時30分~17時30分で、月曜が休館日なので注意が必要です。また、かなり混雑するので開館する前に並んだ方が良いかと思います。
図面
ジェロニモス修道院の全体の図面です。まず豪華な装飾で有名な南門からは入れません。南門から少し左に行った所が入口(西門)です。ジェロニモス修道院は回廊がある修道院エリアと教会エリアに分かれています。最初の入口は同じですが、どちらに行くかで並ぶ列が変わってきます。

入口の写真です。回廊がある修道院エリアへ行くには左側、教会へ行くには右側に並ぶ必要があります。回廊を見てからその足で教会へはいけません。一度外に出てから改めて右側に並ぶ必要があります。回廊と教会の観光の所要時間はそれぞれ1時間くらいかなと思いますが、再度並ぶことも考えると所要時間は全部で3時間くらい見ておくとよいです。自分も9:30前から並んで、回廊、教会と観光しましたが、終わったのが12:00頃でした。回廊と教会は見どころ満載なので、どちらも中に入った方が良いです。

豪華絢爛な南門
ジェロニモス修道院の南側です。鐘楼の下あたりが入口で、手前に見えるのは南門です。できるだけ並びたくないので、早めに行きました。早すぎてまだ誰も来てませんでした。おかげでじっくり南門を見学できました。

物凄い装飾です。南門はスペイン人建築家ジョアン・デ・カスティーリョにより1518年に建造されました。

扉の所にいるのはエンリケ航海王子です。エンリケ航海王子はポルトガル王国アヴィス朝の初代国王ジョアン1世の息子さんです。西アフリカを開拓した大航海時代の先駆者ですが、本人は航海しなかったとのことです(船酔いのせいか?)。

その上のタンパン(アーチ部分)です。ここには修道院の名前にもなっている聖ジェロニモスの生涯が描かれているとのこと。あとはマヌエル様式の特徴であるサンゴや植物、ポルトガル王国の紋章、渾天儀なども彫られています。どこを観てよいか分からなくなるくらい精密な彫刻ですね。

入口の左右の彫刻です。植物のレリーフが多いのはイスラムの影響なんですかね。あと捻じれたロープのように彫られた柱もマヌエル様式の特徴です。


南門の上部です。真ん中にはイエスを抱いた聖母マリア、その周りを聖人や聖職者が囲んでいます。すでに南門だけでお腹いっぱいになりそうです(笑)。

修道院の圧倒的な回廊
9時くらいに入口前へ。開館は9:30ですが、すでに人が並んでいます。まず修道院の見どころの1つ「回廊」を見学したいので、入口の左側に並びました。混雑具合にもよりますが1時間以上待ちもざらにあるらしいので、開館前から並ぶことをおすすめします。

9:45くらいにようやく入れました。リスボアカードを見せて修道院エリアへ行きます。ちなみに右側に見える豪華な装飾は教会の入口の門です。後で行きます。

タイルがある素敵な部屋に来ました。ここを出ると回廊へ行けます。

ポルトガルの装飾タイルは「アズレージョ」と呼ばれています。もちろんイスラムの影響です。ポルトガルの文化に根付いており、教会はもちろん普通に家とか駅とかで見ることができます。ポルトガル観光の楽しみの1つでもあります。

回廊へ来ました。まず大きさに驚きました。圧倒的な存在感があります。天井のリブが興味深いです。天井を支えまくってますね。所々にお花の彫刻もあり、もはや機能というよりデザインといった感じです。

回廊は大きな中庭を囲んでおり、一辺が55mあります。ジェロニモス修道院の回廊は2階建てとなっており、1階はフランス人建築家ボイタック、2階は南門を造ったスペイン人建築家ジョアン・デ・カスティーリョによるものです。2人ともマヌエル様式を代表する建築家です。マヌエル様式を確立したのがボイタックで、それを引き継いだのがジョアン・デ・カスティーリョといった感じです。

違う人が設計しているせいか、1階と2階でアーチ部分の全体的なデザインが全然違います。さらに各アーチそれぞれ装飾も異なっています。アーチの間にある小さな円錐形の塔もマヌエル様式の特徴の1つです。

1階部分のアーチです。アーチの中にさらにアーチがあり、計7つのアーチでできています。そして装飾のオンパレード。

こちらも1階アーチですが、他と装飾が違います。ちょっと暗いですが一番上には船のレリーフがあります。アーチの向こうに見えるのは鐘楼です。

2階部分のアーチです。1階よりシンプルで、3アーチ構造です。

とにかく目をやる所全てに何かしらのレリーフがあります。こちらはロープの結び目の彫刻です。船に関連したものですね。

マヌエル様式で分かりやすいのが、捻じれたロープのような柱です。至る所で見かけます。また、柱には植物のレリーフも多いです。


なんか変わったレリーフですね。水捌けの通路になっている部分も装飾されてました。


回廊から移動して今度は「食堂」へ。修道士らが食事をした場所です。奥にある絵には聖ジェロニモスが描かれているとのことです。

18世紀に施されたアズレージョです。美しいですね。

サンタマリア教会
回廊をたっぷり観光した後は一度外へ出て、今度はもう1つの見どころであるサンタ・マリア教会を観るために右側の列に並びます。ほんと人気があるんですね、ずっと混雑しています。

20~30分ほど待って、サンタマリア教会の入口(西門)まで来ました。ここも緻密なレリーフがたくさんあります。

扉上部のレリーフです。新約聖書の内容が表現されています。左から受胎告知、イエスの誕生、東方三博士の礼拝です。

扉左側はマヌエル1世の彫刻です。

右側はマヌエル1世の妻マリアの彫刻です。

サンタマリア教会の内部へ。すでに凄そうな予感しかしないです。

入ってすぐ右側にはポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスのマヌエル様式の石棺があります。

入って左側にはインド航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマのマヌエル様式の石棺があります。十字架、船、渾天儀と大航海時代に関連したレリーフが彫られています。

サンタマリア教会全体です。凄いですね。天井のリブは回廊と似たような感じです。柱には植物のレリーフがたくさん彫られています。身廊と柱を挟んで2つの側廊がある3廊式の教会です。

天井が高いです。上を見上げていると森の中に迷い込んだかのような気分になります。

柱はヤシの木をモチーフにしているとのことです。彫刻も精密です。

一番奥は主祭壇です。左右にあるステンドグラスも美しいですね。主祭壇は大理石で造られており、少し雰囲気が違います。

主祭壇の左にはマヌエル1世と王妃マリアの石棺があります。写真はないですが、右側には息子ジョアン3世の石棺があります。所々にイオニア式の柱があります。

主祭壇から入口を振り返ると、2階部分の聖歌隊席にはイエス・キリストの磔刑の像が見えます。光が入ってくる部分に意図的に置かれていると思われます。


ベレンの塔
ジェロニモス修道院を見終わり、続いて「ベレンの塔」へ。ベレンの塔はテージョ川を行き交う船を監視するための要塞です。1515年にマヌエル1世の命令で建築がスタートし、1520年に完成しました。ジェロニモス修道院と同様、マヌエル様式の建築物です。
行き方・料金
「Lg. Princesa」バスターミナルから徒歩5分ほどです。バスまたはトラム(15E)でアクセスできます。Google Mapで路線検索できます。ジェロニモス修道院から歩くと15~20分くらいです。
自分はジェロニモス修道院から歩きました。世界遺産ではないですが、途中で「発見のモニュメント」も観たかったので。ジェロニモス修道院のすぐ南に位置します。
発見のモニュメントはエンリケ航海王子の500回忌を記念して1960年に造られました。テージョ川に向かって建っており、大航海時代に活躍した人らがずらりと並んでいます。一番前にいるのがエンリケ航海王子です。

ヴァスコ・ダ・ガマやカブラル、マゼランなどもいますが、分かりやすいのが一番後ろで膝をついてお祈りをしているフランシスコ・ザビエルですね。

発見のモニュメントは内部に入ることができます。今回は入ってませんが、展望台や展示などがあり入場料金は2025年9月調べで10ユーロです。詳細は公式サイトにて。リスボアカードでも入れます。
発見のモニュメントから西へ10分くらい歩いてベレンの塔に到着です。さっきまで小雨でしたが、晴れ間が見えてきました。小さな美しい建物です。

ベレンの塔の入場料金は、15ユーロです(2025年9月調べ)。詳細は公式サイトにて。リスボアカードで入れます。24時間有効のリスボアカードならジェロニモス修道院とベレンの塔に行くだけで余裕で元は取れます。リスボアカードの詳細は以下にて解説しています。

ベレンの塔のジェロニモス修道院と同じく、営業時間が9時30分~17時30分で、月曜が休館日となります。
チケットブース
今回リスボアカードを持っていましたが、入口の係の人に聞くと整理券が必要とのことで、まずは近くにあるチケットブースへ。
どうやら待ち時間が2時間くらいあるみたいでした。ベレンの塔は小さいので、一度に入れる人数も少なく、かなり待たなきゃいけない様子…。ジェロニモス修道院以上の混雑具合です。

他にもサンジョルジェ城やアズレージョ博物館もこの日のうちに行きたかったので、ベレンの塔は泣く泣く諦めました。ベレンの塔が中心部にあるんだったら他を見てすぐ戻ってこれるけど、けっこう離れてますし…。

ベレンの塔の外観と模型を堪能して、この場を後にしました。

まとめ
リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔のまとめです。
- どちらもリスボアカードで無料になる(24時間リスボアカードならどちらも行けば余裕で元を取れる)
- どちらも混在しているので1日で観光する場合は、どちらかは開館前から行くのがおすすめ
- ジェロニモス修道院の見どころは回廊と教会(どちらも行くべし)
- ジェロニモス修道院の観光の所要時間は並ぶことも考えて2~3時間は必要