ウズベキスタンシャフリサブス

【世界遺産】「シャフリサブス歴史地区」英雄ティムールの生誕地を徹底解説!

シャフリサブス 世界遺産 ウズベキスタン

2023年10月のウズベキスタン旅行記です(料金などは2025年時点のものを分かる範囲で記載してます)。

サマルカンドから南へ約80キロに位置する世界遺産「シャフリサブス歴史地区」へ訪問しました。英雄ティムールの出生地であり、歴史あるイスラム建築を観ることができます。

サマルカンドからシャフリサブスへのアクセス方法は以下から。

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世界遺産シャフリサブスとは?

シャフリサブスは、14世紀末に中央アジアからイランまでの大帝国「ティムール朝」を築き上げた英雄ティムールの生誕地です。ティムール朝の首都はサマルカンドですが、シャフリサブスは第2の都市として数多くの美しい建物が建造されました。文化や政治的にも重要な都市と位置づけられていました。

16世紀にブハラ・ハン国のアブドゥッラー2世によって破壊されましたが、現在でも一部の建物や遺構が残っています。

シャフリサブスは、ティムール朝時代の印象的な建築物や遺構が残っている点が評価され、2000年に「シャフリサブス歴史地区」として世界文化遺産に登録されました。

その後、観光を目的とした過度の開発などが問題視され、2016年に危機遺産リストに加えられました。今後問題が解決しなければ、世界遺産としての価値がないと判断され、世界遺産リストから抹消される可能性もあります。

登録名シャフリサブス歴史地区
(Historic Centre of Shakhrisyabz)
登録区分文化遺産
登録基準(3)、(4)
登録年2000年(2016年に危機遺産リストに追加)

世界遺産「シャフリサブス歴史地区」の主な構成資産は以下の3つです。どれも見応えたっぷりの建築です。

アクサライ宮殿跡
ドルッサオダット建築群
ドルッティロヴァット建築群

シャフリサブスの歴史

シャフリサブスは元々現在のキタブ辺りにありました。13~14世紀頃に現在の場所へ移されたと言われています。

シャフリサブスは紀元前からの歴史を持ち、かつては「キシュ」と呼ばれていました。ソグド人の街で、サマルカンドと同様にシルクロードのオアシス都市として栄えていました。

また、この地を支配していたアケメネス朝ペルシアの終焉の地(紀元前4世紀頃)でもあり、アケメネス朝を滅ぼしたアレクサンドロス大王の滞在地としても有名です。

7世紀のイスラム化以降、サマルカンドやブハラが経済の中心となり衰退していくも、14世紀末にシャフリサブス出身のティムールが大帝国ティムール朝を築いてからは、首都サマルカンドに次ぐ都市として発展していきました。

シャフリサブス 世界遺産
アクサライ宮殿跡の近くにあるティムール像

シャフリサブスではティムール朝時代に多くの美しい建築物が造られましたが、16世紀になるとティムール朝滅亡後この地を支配していたブハラ・ハン国アブドゥッラー2世により破壊されました。シャフリサブスの攻略の際、急な坂道を登る時に疲労で愛馬が死んだため怒って破壊したらしいです。これが本当なら何とも酷い理由ですね。

2000年に世界文化遺産に登録され、ティムール朝時代から残る数少ない建築物や遺構を観ることができます。

過度な観光開発により歴史的価値が損なわれる可能性があると世界遺産委員会で判断され、2016年に危機遺産リストに加えられました。

アクサライ宮殿跡

世界遺産範囲の北側(ティムール像から北方面)にある廃墟のような建物が「アクサライ宮殿跡」です。アクサライ宮殿はティムールにより1380年に建設が始まり、彼が亡くなる直前の1404年に完成した夏の離宮です。「アクサライ」は「白い宮殿」という意味です。現在は宮殿の入口となる巨大な門の遺構のみ建っています。

シャフリサブス 世界遺産

料金・場所

入場料金は2023年20月時点で21000スム(250円くらい)でした。2025年現在の料金は調べましたが分かりませんでした。受付のお姉さんが何故か17000スムに負けてくれました。ありがたいです。入場料金を支払うことで建物の近くまで行くことができます。

アクサライ宮殿跡の場所は、ティムール像から歩いて数分に位置します。

圧巻の巨大建築

北に向かって見える部分は門の裏側になります。高さ35mの圧巻の巨大建築です。サマルカンドの巨大建築ビビハニム・モスクの門と同じくらいの高さです。

シャフリサブス 世界遺産

こちらは門の表側です。青い幾何学模様のタイルが今でも少し残っています。この2つの建物は元々アーチで繋がっていましたが、16世紀にブハラ・ハン国によて壊されてしまいました。当時の大きさは50m以上だったらしく、中央アジア最大の門だったとのことです。左右にある筒状のものはミナレットです。ミナレットは門よりももっと大きかったんだろうなと想像できます。

シャフリサブス 世界遺産

門の左側です。近くで見ると巨大さがよく分かります。ずっと見上げてないといけなくて首が疲れました(笑)。午前中なので少し逆光気味でした。

シャフリサブス 世界遺産

こちらは門の右側です。上部の曲線から元々アーチで繋がっていたんだろうなと容易に想像つきますね。

シャフリサブス 世界遺産

青いタイル部分の多くは剥がれ落ちていますが、こういう廃墟感は好きです。門の傍では小さなマーケットが開かれてました。

シャフリサブス 世界遺産

真下から眺めてみました。門でこの大きさということは宮殿自体は本当に大きかったんでしょうね。今は整備された公園ですが、敷地一帯が宮殿だったんだろうなと思います。伝承によれば、門の左側には「スルタン(支配者のこと)はアッラーの影である」、右側には「スルタンは影である」と書かれ、右の「アッラー」の文字がないことに激怒したティムールは、職人を門の上から投げ落としたらしいです。本当かどうかは分かりませんが、ティムールの怖さがよく分かる逸話です。

シャフリサブス 世界遺産

門のすぐ傍には宮殿の遺構が少し残っていました。ガラス張りで保護されていました。タイル装飾が残っています。

シャフリサブス 世界遺産

こちらは剥き出し状態でした。元々宮殿にあったものでしょうか?

シャフリサブス 世界遺産

アクサライ宮殿跡を堪能した後はランチです。なかなかレストランが見つからない中、なんとなく入ったピザ屋さんが大当たりでした。

シャフリサブス レストラン

店内も綺麗でした。

シャフリサブス レストラン

釜で焼いたカリカリのマルゲリータがほんと美味しかったです。ピザ1枚と飲み物1つ頼んで65000スム(760円くらい)でした。

シャフリサブス レストラン

ドルッサオダット建築群

続いて向かったのは、アクサライ宮殿跡から南にある「ドルッサオダット建築群」です。ティムールの息子ジャハーンギールの霊廟やモスク、ティムールが葬られる予定だった地下室などで構成された建築群です。

料金・場所

入場料金は2023年20月時点で21000スム(250円くらい)でした。2025年現在の料金は調べましたが分かりませんでした。アクサライ宮殿跡と同じくなぜか20000スムに負けてくれました!

最初モスク側から入ってしまい、入場料金ちゃんと払ってねと注意されてしまいました。受付は霊廟側にのみありました。なんとも分かりにくい…。

世界遺産範囲の南側に位置しますが、アクサライ宮殿跡から少し歩く必要があります。アクサライ宮殿跡から1.5キロくらいなので、歩いて20分ほどです。

ジャハーンギール廟

ドルッサオダット建築群の中心となるのは、ティムールが最も寵愛した王子ジャハーンギールの霊廟です。ドルッサオダットは「大いなる力の座」という意味で、ジャハーンギールの霊廟は「権力の霊廟」とも呼ばれています。ジャハーンギールは22歳で戦死し、ティムールにより1392年に霊廟が建造されました。高さ27mの巨大な霊廟です。ティムールが造るものはとくにかくデカいです。

シャフリサブス 世界遺産

かなり見た目が変わっています。円錐のドーム下に石棺があります。写真の右側が正面入口となります。

シャフリサブス 世界遺産

大分修復されていて綺麗な見た目をしていますが、元々タイルで覆われていたのでしょうね。ほとんど剥がれ落ちています。装飾されていた部分がかなり厚みがあり興味深いです、

シャフリサブス 世界遺産
シャフリサブス 世界遺産

正面入口は漆喰で塗り固められたシンプルなデザインです。

シャフリサブス 世界遺産

中にはジャハーンギールの石棺です。ドーム下の部分になります。こちらもシンプル。

シャフリサブス 世界遺産

ドーム下はレンガ剥き出しで、造りかけのような状態でした。元々こういうデザインだったのでしょうか?四角形の平面からスキンチ(四角形平面を円形に近づけるために四隅に置かれた部材)を用いて円形に移行し、そこに円形ドームを造るという構造です。このドーム構造はウズベキスタンなど中央アジアのイスラム建築でたくさん観ることができます。

シャフリサブス 世界遺産

ドームの四隅の1つだけムカルナス(蜂の巣みたいな構造)で装飾されていました。その下にも綺麗な装飾がありました。元々廟内全体がこのようなデザインだったのかと思います。

シャフリサブス 世界遺産

ジャハーンギール廟の隣には19世紀建立のテラス式のモスクがありました。木造の柱と天井で開放的です。地元の人も集まっていて、ゆったりした時間が流れていました。

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ティムールの墓

ドルッサオダット建築群には地下室があり、そこにはティムールが入るはずだった石棺があります。美しいデザインの木造の扉の先に地下に降りていく階段がありました。

シャフリサブス 世界遺産

1405年に中国(当時は明)への遠征中にティムールは病死してしまいました。ティムールは彼の出身地であるシャフリサブスでの埋葬を希望していましたが、当時シャフリサブスへの道が雪で閉ざされていたため、ティムールの孫ウルグ・ベク(ティムール朝4代目君主)によりサマルカンドのグーリ・アミール廟に埋葬されました。

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地下はひんやりしており、数人入れば満員になるような狭さでした。ティムールが入るはずだった大理石の棺もありました。

シャフリサブス 世界遺産

ドルッサオダット建築群の敷地内には、他にもティムールの親族と思われる石棺がいつくも野ざらしで置いてありました。元々廟があったと思われます。

シャフリサブス 世界遺産
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ドルッティロヴァット建築群

最後に「ドルッティロヴァット建築群」です。名前が分かりにくいですね(笑)。ドルッティロヴァットは「瞑想の家」という意味です。ティムール朝4代君主ウルグ・ベクにより整備されました。ドルッティロヴァット建築群は、モスクと双子ドームの霊廟から構成されています。奥に見える大きいドームがモスク、手前の2つのドームが霊廟です。周囲には多くの石棺が野ざらしで置いてありました。

シャフリサブス 世界遺産

料金・場所

入場料金は2023年20月時点で21000スム(250円くらい)でした。2025年現在の料金は調べましたが分かりませんでした。

ドルッティロヴァット建築群は、ドルッサオダット建築群から歩いてすぐのところにあります。

コク・グンバッズ・モスク

1435年にウルグ・ベクが父である3代目君主シャー・ルフを偲ぶために建設した金曜モスクです。コク・グンバッズ・モスク(青色のドームを持つモスク)の名前で知られています。

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モスク内は美しいフレスコ画で装飾されていました。所々剥がれ落ちていますが、近世の修復とのことです。

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ドーム下の天井です。落ち着いた色合いで上品な雰囲気があります。

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タイル装飾ばかり見てきたので、フレスコ画がとても新鮮。

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グンヴァズイ・サイダーン廟

モスクを出ると目の前にはターコイズブルーの綺麗なドームが2つ見えます。2つとも霊廟で、建造された年月は違いますが、くっついて建っており可愛らしいです。

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まず右側の「グンヴァズイ・サイダーン廟」です。 1437年から1438年にかけて、ウルグベクが子孫のために造った霊廟です。内部には4つの石棺が置いてありました。周壁の下部はターコイズブルーのタイルで装飾されており、全体的な廟内の色使いは好きな感じです。一番奥にある(写真でいう一番右)石棺はコクダッシュ(青い石)という墓石で、上の部分が凹んでいます。コクダッシュには病気を治す効力があると信じられており、拝観者たちが石を触っていくために窪みができたとのことです。

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石棺に刻まれたカリグラフィー(文字の装飾)も読めませんが美しいですね。

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さきほどのモスクと同じように、廟内はフレスコ画がメインです。

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ドーム下の天井もとても美しいです。大分色も落ちてますが、年季があってよい感じです。

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シャムスッディーン・クラール廟

続いて左側の「シャムスッディーン・クラール廟」です。1374年ティムールにより建造されました。中には石棺が1つしかありませんが、ティムールの父タラガイとティムールの先生であるシャムスッディーン・クラールが眠っているとのことです。こちらも大理石の立派な石棺です。

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内部は最近描かれたかのような綺麗なフレスコ画で装飾されていました。

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ドーム下の天井です。花など植物模様が綺麗に描かれています。自分がサマルカンドで見てきたイスラム建築にはフレスコ画あまりなかったので新鮮でした。

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