2023年4月のカンボジア旅行記です(料金などは2025年時点のものを分かる範囲で記載してます)。
アンコール朝時代の首都遺跡群である「コー・ケー」を観光してきました。訪問時から5ヶ月後、2023年9月にめでたく世界遺産に登録されました。嬉しいですね。7層の巨大ピラミッドが見どころです。
この記事ではコー・ケーはどんな世界遺産なのか、実際に訪問した遺跡を紹介しつつ解説してきます。
世界遺産「コー・ケー」とは?
コー・ケー遺跡群は2023年に「コー・ケー:古代リンガプラもしくはチョック・ガルギャーの考古遺跡」という名称で世界遺産に登録されました。
アンコール朝時代、928〜944年という短い期間に首都であったチョック・ガルギャーの遺跡群です。アンコール朝の遺跡群ですが、世界遺産「アンコール」には含まれず、1つの遺跡群として世界遺産となりました。
現在ではコー・ケーと呼ばれていますが、当時はクメール語でチョック・ガルギャーという名前でした。チョックは「池」の意で、ガルギャーは「コーキー」と呼ばれる木を指しています。コー・ケーの名前はこれに由来します。また、サンスクリット語ではリンガプラと呼ばれ、「リンガ(シヴァ神の象徴)の都市」という意味です。
コー・ケーは以下の理由で世界遺産に登録されました。
- 他のクメール寺院では見られない7層の大ピラミッドをはじめとしたダイナミックな建築や彫刻の数々が、芸術的・文化的価値が高いと評価されたこと
- 短期間ではあったがクメール史における重要な時代の王都であり、東南アジアの建築や都市計画の多様性を示す貴重な証拠として評価されたこと
登録名 | コー・ケー: 古代リンガプラもしくはチョック・ガルギャーの考古遺跡 (Koh Ker: Archaeological Site of Ancient Lingapura or Chok Gargyar) |
国 | カンボジア |
登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2)、(4) |
登録年 | 2023年 |
コー・ケーの敷地はかなり広く、60ほどの遺跡がありますが、ラハールと呼ばれる大貯水池周辺の中心部分が世界遺産の登録範囲となります。中心的な寺院はプラサット・トムであり、寺院内の西側にはプランと呼ばれる巨大ピラミッドが建てられています。以下の地図では、赤線枠内が世界遺産登録範囲、黄色線枠内がバッファゾーンに指定されています。

コー・ケーの歴史
創設年 | 928年 |
創設者 | ジャヤヴァルマン4世 |
宗教 | ヒンドゥー教シヴァ派 |
形態 | 平地式/一部ピラミッド式 |
建築材 | 砂岩/レンガ |
コー・ケーは928年にジャヤヴァルマン4世(在位928〜941年)により、ヤショーダラプラに代わる新たな首都として建設されました。ジャヤヴァルマン4世はコー・ケー地域の出身者でもあります。
ジャヤヴァルマン4世の時代に数多くの寺院が建設され、首都として繁栄しました。彼の死後ハルシャヴァルマン2世が王位を継ぎましたが、即位後にラージェンドラヴァルマン2世により王位が奪われ、944年に元のヤショーダラプラに再遷都されました。コー・ケーは20年弱という短期間の首都であっため、未完成の寺院もいくつかあります。
アンコール朝の歴史は以下にて。

クメール建築の見どころポイントは以下にて。

15世紀にアンコール朝が終わり、クメール王国の首都がプノンペンへ移ると、コー・ケー遺跡群はジャングルの中に忘れられた存在となりました。
19世紀後半のフランス保護国時代に、コー・ケー遺跡群が発見され、調査が進められました。
20世紀後半のカンボジア内戦時代では、美術品が大量に盗まれ密売されるなどの被害が発生しましたが、1996年文化遺産保護法により厳重に保護されるようになりました。
カンボジア内戦時に埋められた地雷の撤去作業は進んでいますが、まだ埋まっている危険性がある場所にはドクロマークの標識が建っているので、近づかないように注意が必要です。
場所・料金・営業時間
コー・ケーはシェムリアップから北東に約100kmに位置する遠方の遺跡群です。シェムリアップから遠方なことを考えるとタクシーが良いかと思います。
自分達はシェムリアップの日本人宿「blank」でガイドなしのツアーを予約しました。宿泊してませんでしたが、ツアー参加OKでした。プレアヴィヒア、コー・ケー、ベンメリアがセットになった日帰りのツアーで、料金は200ドル(入場料などは込まず)でした。車1台分の料金なので参加人数で割ることができました。今回参加者が全部で3人だったのでかなりお得でした。
他にもツアーはありますが、3遺跡で距離を考えるとこの値段はかなり安いかと思います(2023年4月時点)。
チケット販売所は遺跡群の入口にあります。コー・ケーの入場料は2023年4月時点で15ドルでした。訪れた時はちょうど値上がりしたくらいのタイミングでしたが、2025年現在も15ドルのようです。オンラインでもチケット購入可能です(アカウント作成必要)。
営業時間は、7:00〜18:00です。
コー・ケーの全体マップ
コー・ケーの世界遺産登録範囲の全体マップです。ラハールと呼ばれる大貯水池を中心にかなりの数の寺院遺跡があり、崩壊してるものも多いです。敷地が広いので、タクシーなどで各遺跡を周ることになります。コー・ケーの最大の見どころは、中心的な寺院であるプラサット・トム内に位置するプランという7層の巨大ピラミッドです。敷地内の遺跡を全部観たら半日くらいかかりそうですが、主要なものだけなら遺跡内の移動も含めて観光の所要時間は2時間くらいかと思います。

プラサット・ブン・クナー(Prasat Boeng Khnar)
敷地内の遺跡には全部は行けてませんが、訪問したものを紹介します。
まず「プラサット・ブン・クナー(Prasat Boeng Khnar)」です。先ほどの全体図だと大貯水池の南側の「Prasat Khna」と書かれてる所です。

ほぼ崩壊してる祠堂が1基のみでした。

祠堂内部には何もありませんでした。

かつては巨大なリンガとヨニがあったとのことです。

プラサット・チュラップ(Prasat Chrap)
続いて「プラサット・チュラップ(Prasat Chrap)」です。大貯水池の東に位置します。

こちらも崩壊してます。かなりゴツゴツした祠堂が3基ありました。

下部分がラテライト、屋根は砂岩です。内部は何もありませんでした。

プラサット・クラチャップ(Prasat Krachap)
こちらは「プラサット・クラチャップ(Prasat Krachap)」です。大貯水池の東に位置します。

修復中のため中には入れませんでした。

美しい門が残っていました。両端の渦巻き模様は、バンテアイ・スレイやプレアヴィヒア寺院でも見かけた様式です。

遺跡に根を生やした木が倒れていました。何世紀もジャングルの中に忘れられていたことがよく分かる様子です。


プラサット・トム(Prasat Thom)
メインとなるプラサット・トム(Prasat Thom)に到着しました。プラサット・トムはいくつかの寺院からなる複合建築群です。
エントランスは駐車場完備で、お土産物屋さんが並んでいました。

入口はかなり崩壊していました。

内部も崩壊してます。崩壊し過ぎていて、伽藍の配置などはよく分かりません。



美しいレンガの祠堂が綺麗に残っていました。

こちらは半壊した中央祠堂です。レンガ造りの祠堂が多い印象です。内部にはヨニがありました。

レリーフもありました。金剛力士像ですね。

先に進むと、向こうには巨大ピラミッドが見えました。ワクワクしてきますね。

大ピラミッドであるプラン(Prang)
プラサット・トム内にある「プラン」(Prang)と呼ばれる7層の大ピラミッドです。遠くからでも凄さがよく分かります。この高さや見た目は他のアンコール遺跡にはないですね。

開放的な敷地内に堂々と建っています。かつて頂上にあった中央祠堂は跡形もなく崩壊してます。

石造りの堅固な基壇です。

周囲の外壁はラテライトです。リンガが施されていました。

ピラミッド裏側から登ることができます。

頂上に到着しました。

とても見晴らしのよい場所です。

中央祠堂は無く、基壇の部分にはガルーダ(シンハかな?)のレリーフがありました。今は無き中央祠堂を支え続けています。

周囲のジャングルを広々と見渡すことができます。天気も良くとても気持ちよかったです。これを見るだけでもコー・ケーは来る価値がありますね。


まとめ
世界遺産コー・ケー観光のまとめです。
- アンコール朝時代の巨大な首都遺跡
- シェムリアップから100kmほどなので車での移動がベスト
- 遺跡の数は多いが、崩壊しているものが多い
- 7層の巨大ピラミッド「プラン」が最大の見どころ
- ピラミッド頂上からのジャングルを見渡すことができる
- 主要な遺跡だけなら観光の所要時間は2時間くらい