2023年4月のベトナム旅行記です。
世界遺産「ミーソン聖域」へホイアンから日帰りで訪れました。
ベトナム中部の王国「チャンパー」のヒンドゥー教寺院遺跡です。日帰りツアーで行きました。
世界遺産ミーソン聖域とは?
登録名 | ミーソン聖域 |
登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2)、(3) |
登録年 | 1999年 |
「ミーソン聖域」は、チャム人によるベトナム中部の王国「チャンパー」(2世紀末〜17世紀)のヒンドゥー教寺院遺跡です。チャム人の聖地でもあります。1999年に世界文化遺産として登録されました。
ミーソンは、ベトナム語で「美しい山」を意味します。ミーソン聖域は聖山(サンスクリット語で マハーパルヴァータ)の南麓に広がっています。
レンガ造りの堂が建ち並ぶ遺跡で、主に7〜13世紀の遺構です。
4世紀後半にチャンパー国王が、ヒンドゥー教のシヴァ神を祀る木造の祠堂を建設したのが始まりで、7世紀以降はレンガで再建されました。それ以降寺院がたくさん建てられ、聖地となりました。寺院の建築様式は、同じくヒンドゥー教国アンコール朝(カンボジア)の初期の寺院と似ています。
20世紀初頭にフランス人により遺跡が発見され、補修が進む一方で盗難により多くの美術品が失われました。
1965年からのベトナム戦争では遺跡はかなり破壊され、その後保護活動により修復されましたが、今でも戦争時の爪痕が残っています。
敷地はかなり広く、各寺院が点在しており、小さいものまで含めるとA〜Nグループまであります。それぞれ時代や建築様式が異なります。分かりにくいですが、以下はユネスコのサイトの地図です。
チャンパーの歴史
元々ベトナム中部には、紀元前後から、北部のベトナム人とは人種の違う「チャム人」(インドネシアと同じくオーストロネシア語族)が住んでいました。
前111年より、ベトナム中部は中国王朝「漢」の武帝により日南郡が置かれ、直轄地として支配されていました(ベトナム北部も同様)。
2世紀末、チャム人は漢から独立して「チャンパー王国」を建国しました。この頃から東西を結ぶ港湾国家して発展し、中国とも交易が続きました。ベトナム人気の観光地ホイアンは元々チャンパーの貿易港として発展してきた歴史があります。
3世紀以降、インドの文化が流入し、チャンパーはヒンドゥー教国家となり、ヒンドゥー教寺院がたくさん作られました。世界遺産である「ミーソン聖域」は7〜13世紀頃の寺院遺跡です。
7世紀頃の中国王朝「唐」の資料に、チャンパーは「林邑」という名前で登場しています。
859年にジャワ島のシャイレンドラ朝に侵攻され滅亡するも、その後再建され、それ以降は北部ベトナム王朝や南のクメール王国と争いました(カンボジアのバイヨン遺跡に戦闘のレリーフあり)。
9世紀頃から中国の史料には、チャンパーは「占城」として現れるようになりました。チャンパー原産の占城米(チャンパ米)が当時の中国王朝「宋」に輸入され、二期作を可能にして飢饉を助けたという記録もあります。
1281年、中国王朝「元」のフビライ・ハンが侵攻しましたが、日本の元寇と同じく、暴風により撤退し、侵略を防ぐことができました。
1471年、北部のベトナム王朝「黎朝」により首都ヴィジャヤを占領され、衰退へ向かい、最終的に17世紀に滅亡しました。建国が2世紀末なので、物凄い長い間ベトナム中部を支配していた王朝です。
チャム人は、現在でもベトナムの山岳地帯に少数民族として生活しています。
ツアーでミーソン聖域へ
今回ミーソン遺跡へはツアーで行きました。ツアーは効率的ですが、ツアー時間は限られてるので、じっくり遺跡見学したい場合は個人でタクシーチャーターが良いと思います。
ミーソン聖域はクァンナム省にあり、ダナンやホイアンから1時間程度で行くことができます。
今回も「klook」で申し込みました。klookのツアーでは、英語のガイドとランチ付きでした。行きはホイアンからバス、帰りはボートでホイアンまで。入場料は別途必要(入場チケットもklookで申し込めます)ですが、ツアー料金は2400円ほど(2023年4月時点)でしたのでかなりお得かと思います。
klookの会員登録の際に以下の紹介コードを入力していただくと、登録後すぐに500円券がもらえますので、是非活用ください!
紹介コード:LPPU3Y
実はちょっとしたトラブルがありました。ホイアン滞在2日目にミーソン聖域ツアーの予定だったのですが、ホテルで待ってもお迎えは来ず、最終的に出発の集合場所まで行きましたが、ツアーバスは来ずという事態。連絡したところ、klookから旅行会社にメールが届くはずなのですが、迷惑メールに入ってしまったため確認が漏れたとのこと。急遽翌日のツアーに変更しました。ホイアン滞在があと1日余裕があってホントよかったです。しっかり対応してもらえて、翌日はちゃんとお迎えがありました。
入場料・営業時間
ミーソン聖域は年中無休で、6:00〜17:00で営業してます。かなり早い時間からやってるので、日の出を見るツアーもあるようですね。
ホイアンからバスで向かい、ミーソン聖域に到着。入場前にチケットオフィスがあります。
自分達は「klook」でチケット購入してたので、ここでバウチャーを見せてチケットを貰いました。入場料は15万ドンでした(2023年4月時点)。
入場口です。
世界遺産マークを発見。
遺跡群がある場所は遠いので、ミニバスで移動します。
ミーソン聖域の全体図
ミーソン聖域はかなり広く、小さいものまで含めるとA〜Nグループまであります。観光ポイントとなるのは、BCDグループ、Aグループ、Gグループ、Eグループ、Fグループあたりでしょうか。
今回のツアーでは、A〜D、Gグループへ行きました。
歴史あるレンガ建築群
観光の1番のメインとなるBCDグループです。3つのエリアが隣り合っています。10〜11世紀頃のミーソン様式と呼ばれる建築群です。遺跡群の中でも最も状態が良いとされています。
まずはCグループにある主祠堂です。上から下まで見事なレンガ造りです。
一見、土台となっているレンガの方が古そうですが、実はそれは修復時のもので、上に積み重なっている綺麗なレンガが当時のものとのことです。なんか不思議ですね。
接着剤を使わずにレンガを積んでいるとのことです。物凄い技術です。現在でも再現できない技術のため、修復した部分は接着剤が使用されているようです。
女神像のレリーフがレンガに掘られています。
主祠堂には中に入れる場所もありました。ここの入口アーチ部分は砂岩で造られています。
中には「ヨニ」。女性の子宮のことで、ヒンドゥー教において聖なるものとして崇拝されています。
男性器の象徴である「リンガ」(シヴァ神の象徴)とセットになっていることも多いですが、ここにはヨニのみでした。
上を見上げると屋根は美しいレンガ積み。
屋根はレンガを少しずつずらして積まれて造られる「迫り出し構造」です。屋根を高くはできるけど、空間はあまり広くできません。
主祠堂の周辺の建物も状態良いですね。
Bグループへ。基壇のみですが、主祠堂です。こちらはレンガでなく、砂岩の基壇です。
中心部には、リンガ(男性器の象徴)とヨニ(女性器の象徴)がありました。崇拝の対象です。
近くにはかつて利用されていた砂岩製の柱が置いてありました。
チャム語の碑石もありました。チャム語は現代でも解明できていないとのことです。ロマンがありますね。
独特なアーチを描く屋根の宝蔵です。非常に保存状態がよいです。BCDグループで1番見応えがある建物だと思いました。
横から見た宝蔵です。女神像のレリーフもたくさんありました。
見応えある美術品
Dグループは2つ短形房(長方形の房)があり、中は美術品展示室となっています。
矩形房もレンガ造りです。
入口アーチがレンガをずらして積み重ねた迫り出し構造になっています。屋根部分は当時のものは残っていないです。
ここの美術品の目玉であるシヴァ神の像です。額の第三の目は開いてないようです。
チャム人達はヒンドゥー教のシヴァ神を崇拝していました。これに対してカンボジアのアンコール遺跡の多くの寺院ではヴィシュヌ神が崇拝されています。
他にも色々とありました。
ベトナム戦争時の爆弾もありました。
もう1つの矩形房へ。
シヴァ神の頭部分が無くなっています。
かつて最大の塔があった場所
橋を渡りAGグループへ。
まずはAグループ。9〜11世紀頃の遺跡群で、ドンズン様式、ホアライ様式、ミーソン様式が混合しています。主祠堂と両隣に2つの副祠堂というシンプルな造りです。
かつて28mにも及ぶミーソン聖域最大の塔がありましたが、残念ながらベトナム戦争で破壊されてしまいました。これが今でも残っていたら、ミーソンはアンコール遺跡と並ぶくらいもっと注目される世界遺産になっていたのかなと感じました。
全体的にかなり修復されており、レンガも綺麗ですね。
何とも美しいレンガ積みです。
主祠堂には、大きなリンガとヨニがありました。
ヨニの土台部分には可愛らしいレリーフがありました。つい見逃してしまいそうです。
Aグループの建物は全体的に修復はされていますが、レリーフなど当時のものが所々で見られますので、色々と探してみると楽しいと思います。
砂岩の柱もありました。門に使っていた柱でしょうか。
Gグループへ。12〜14世紀頃の遺跡で、ビンディン様式です。小さいエリアで、修復中の主祠堂のみありました。
カーラ(ヒンドゥー教では時間を象徴する神)のレリーフが、建物の土台部分に多数見られました。
チャムダンスショー
遺跡の観光後は、伝統あるチャンダンスショーを楽しみました。BCDグループ手前の遺跡管理小屋にて毎日4回開催されており、9:15、10:45、14:00、15:30スタートとのことです。30分のショーです。
沢山の人でした。
まあまあだったかな。この時間を遺跡見学に使いたかったなと思いました。
ランチはミーソンのレストラン
お昼はミーソン聖域の入口付近にあるレストランへ。
「ミークアン」という麺料理を食べました。さっぱりしてるけど味はしっかりで、麺はきしめんみたいです。スープは魚介系かなと。美味しかったです。
ミークアンはダナン発祥の料理で、ハノイやホーチミンでもあまり見かけない料理とのことです。江戸時代にホイアンにやって来た日本人が伝えたものだという説もあるようです。ベトナムの料理って地域色強いですね。
帰りはトゥボン川クルーズでホイアンへ。充実した日帰り観光でした。
まとめ
世界遺産ミーソン聖域のまとめです。
- ホイアンやダナンにしばらく滞在するなら行くべきところ
- ホイアンやダナンから日帰りで安いツアーがたくさん出ている
- ヒンドゥー教の見事なレンガ建築で仏教国であるベトナムでこれを見れるのは貴重
- じっくり遺跡見学したい場合は自力で行く方がよい
- カンボジアのアンコール遺跡と共通点が多いので、比較して楽しむこともできる
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