2023年4月のカンボジア旅行記です。
今回コンポントムを訪れた目的は、世界遺産「サンボー・プレイ・クック」観光です。
アンコール遺跡よりも前に造られており、クメール王国最古の寺院です。そのレポートです。
世界遺産サンボー・プレイ・クックとは?
登録名 | サンボー・プレイ・クックの寺院地区 :古代イーシャーナプラの考古遺跡 |
登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2)、(3)、(6) |
登録年 | 2017年 |
世界遺産サンボー・プレイ・クックは、「サンボー・プレイ・クックの寺院地区: 古代イーシャーナプラの考古遺跡」として2017年に世界文化遺産として登録されました。
サンボー・プレイ・クックはクメール語で「豊かな森の寺院」という意味です。その名の通り、森の中に静かに眠っているような寺院遺跡群です。
時代的には、アンコール地域に首都を移す前のクメール王国(真臘、プレ・アンコール王朝)の7世紀〜9世紀初頭です。当時の首都イーシャーナプラにてレンガ造りで建てられました。唐の玄奘が646年に書いた「大唐西域記」にてイーシャーナプラが触れており、当時のクメール王国は海外にも知られた大国であったことが分かります。
イーシャーナプラは、国王イーシャーナヴァルマン1世により造営された都市で、「イーシャーナ(シヴァ神)の都」という意味です。その名の通り、シヴァ神を祀る寺院がたくさん建てられました。100以上の寺院が造られ、構造物は土台部分も含めれば200もの遺構があるとのことです。
クメール王国の寺院遺跡はアンコールが有名ですが、サンボー・プレイ・クックの特徴は、ここでしか見られない八角形祠堂や空中宮殿のレリーフなどです。
世界遺産の範囲としては、以下となります(ユネスコのサイトより)。以下の赤線で囲まれた寺院地区が世界遺産範囲で、黒線に囲まれた部分はバッファゾーンです。ちなみに寺院地区の西の茶線の範囲内は、環濠に囲まれたイーシャーナプラの都城跡です。
観光の中心部分は3つの寺院となり、N(北)グループの「プラサット・サンボー」、S(南)グループの「プラサット・イェイ・ポアン」、C(真ん中)グループの「プラサット・タオ」です。
トゥクトゥクで移動
お昼前にプノンペンからコンポントムに到着しました。ホテルにチェックインし、ランチを食べた後、トゥクトゥクでサンボー・プレイ・クックへ向かいました。
ちなみにコンポントムはGrabが利用できない地域だったので、ホテルの人にサンボー・プレイ・クック行きたいと伝え、トゥクトゥクを手配してもらいました。街中にもドライバーがたくさん待機はしてるので、足に困ることは無さそうですね。サンボー・プレイ・クックまで片道30キロ、往復でお願いして20ドルでした。
トゥクトゥクからの眺めです。気持ち良い風を感じながら向かいます。
景色が変わってきました。長閑な風景です。
敷地内に入りました。まもなく到着です。
入場料・営業時間
まずは、遺跡の手前にあるチケットセンターへ。目的地の遺跡よりかなり手前にあります。
入場料は10ドルでした(2023年4月時点)。
営業時間は7:00〜17:00です。
サンボー・プレイ・クック中心部マップ
サンボー・プレイ・クックの中心部マップです。観光は基本的には3つの寺院に行くことになります。
プラサット・サンボーの手前でトゥクトゥクのドライバーに降ろしてもらいました。ここでガイドさんも待機してるので、希望があれば頼んでも良いかと思います。確か10ドルだったかと思います。自分らは自由に回りたかったので、頼みませんでした。
プラサット・サンボーの北エリア(Nグループ)
まずはプラサット・サンボーから道を挟んで北側にあるエリアへ。Nグループの一部です。ここにも見応えある祠堂がいくつかありました。
ぽつんと建っているレンガ祠堂です(N16)。
壁にはこの遺跡でしか見られない「空中宮殿」のレリーフ。レンガに直接彫られています。ヒンドゥー教の神話の中に出てくるのでしょうか、とても神秘的なものを感じるレリーフです。サンボー・プレイ・クックの祠堂にはほぼ「空中宮殿」が描かれてました。
中には「ヨニ」(女性器)が祀られていました。
見上げるとレンガ造りの素晴らしさを感じることができます。少しずつずらして積み上げていく「迫り出し構造」になっています。
近くにはこの遺跡で唯一の砂岩製の祠堂(N17)がありました。かなり新しく見えますが、時代的には初期の建物のようです。工事中のため近くまでは行けませんでした。
建物上部には顔がありました。覗いてこちらを見てるようです。
こちらは樹木が絡んだプラサット・チュレイ(N18)です。樹齢200年とのことです。見惚れるくらい樹木と祠堂が一体化してました。人工物と自然の見事なアンサンブルです。
しかし樹木が祠堂を守っているようにも、侵食してるようにも見えますね。今後の樹木の成長具合では祠堂は押し潰されてしまうかもしれません。
プラサット・サンボー(Nグループ)
プラサット・サンボーへ。7世紀初頭に造られた寺院です。
中央には大分崩壊している中央祠堂(N1)がありました。地元の人が結構いますね。観光客らしき人は全くいません。
修復されたレンガもありますね。色が明らかに違います。
こちらは八角形祠堂(N7)です。この形の祠堂はアンコール遺跡にはなく、サンボー・プレイ・クックでのみ見ることができます。
この祠堂にも「空中宮殿」のレリーフがありました。こちらはかなり綺麗に残っています。下に見える宮殿を支える生き物は、グリフォンとのことです。グリフォンは古代ギリシャやローマなどの伝承に出てくる生き物ですが、ヒンドゥー教寺院に描かれてるのが興味深いです。
八角形祠堂の内部です。見上げるとこれまた素晴らしい景色でした。八角形ということがよく分かります。
ドゥルガー像が置かれている祠堂(N9)です。ドゥルガーはシヴァ神の妻ウマの化身です。レプリカで、本物はプノンペン国立博物館にあります。
ハリハラ像が置かれている祠堂(N10)です。ハリハラはシヴァ神とヴィシュヌ神の合体神です。こちらもレプリカで、本物はプノンペン国立博物館にあります。
プラサット・イェイ・ポアン(Sグループ)
少し歩いて、プラサット・イェイ・ポアンへ。7世紀初頭の寺院です。
静かな森の中を歩きます。気温も高く暑いですが、日差しが遮られて助かります。しかし地元の人ばかりですね。地元の人に愛されてる場所なのでしょうね。キャンプしてる人もいました。世界遺産の場所でそれはアリなのかは分かりませんが(笑)。
プラサット・イェイ・ポアンに到着です。
中心へと進みます。
壊れかけたレンガの門(S3)です。崩れてこないように支えられてました。
敷地内には八角形祠堂がたくさんありました(S7〜S11)。空中宮殿のレリーフもかなり綺麗に残ってました。
中央祠堂(S1)です。
入口上部のレリーフにはナーガが描かれています。その上の人物はよく分かりませんでした。
この寺院には周壁があり、そこにはレンガのレリーフがいくつもありました。直径1mほどの円になっているちょっと変わったレリーフです。
解説もありました。ヒンドゥー教の神話の内容らしいですが、描かれてる人物などは不明らしいです。戦いの場面が描かれてるように見えます。
プラサット・タオ(Cグループ)
最後に訪れたのはプラサット・タオです。8世紀後半から9世紀前半に築かれました。
ここは見るものほぼなくて、中央祠堂(C1)のみといった感じでした。さらに工事中でした。
入口はシンハ像(獅子)が護っています。
たっぷり2時間の見学を終え、無事コンポントムの街へ帰りました。
まとめ
世界遺産サンボー・プレイ・クックのまとめです。
- コンポントムの中心からトゥクトゥクで40分ほど
- アンコール遺跡よりも時代的に古い遺跡
- 結構崩れているがレンガ建築の素晴らしさを体感できる
- 八角形祠堂や空中宮殿レリーフなどアンコール遺跡では見られないものがある
- 人が少ないのでじっくり観光できる
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